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今後政府が財政構造改革に取り組む際には、地方税の充実と、地方に対する国の様々な関与の縮減を併せて行うことが、財政構造改革推進の重要なツールとなることについて、もっと理解を得られるようにする必要がある。地方の行財政改革が実現するまでは地方分権は進められないとする論理は逆であって、地方分権こそ財政構造改革推進の重要な手段なのである。

ただし、このロジックをよりよく成立させるためには、単に地方税を充実するというだけではなく、住民が、政府支出の増加(行政サービス水準の増加)を選択した場合には、その結果が自らの負担増となって跳ね返ってくることを明確に意識するような方向で、充実すべき税目やその具体的な仕組みを決定していくことが必要である。また、税制のみならず、政策評価や情報公開、分かりやすい予算・会計制度、中長期の事業計画・財政計画等の充実に取り組んでいくことも必要である。

 

3] 地方公共団体間の関係

地方公共団体といっても、その規模等は千差万別であり、同質性を前提とした議論だけでは不十分な場合もあり得るので、例えば、以下のような点についても留意が必要である。なお、これらは、単に税財政の問題ではなく、合併、広域行政、異なったレベルの政府間での事務・権限の配分といった論点とも関係してくる。

・受益と負担の関係を明確化するという観点からは、行政サービスの中には、都道府県では広すぎるものがあり、逆に、現在の市町村では狭すぎてスピルオーバーを生じるものもある。

 

【参考:スピルオーバー】

地方公共団体の区域は、歴史的経緯等によって定まっており、必ずしも行政サービスの及ぶ地域的な範囲に基づいて定められているわけではないし、また、行政サービスの種類によって、その便益の及ぶ範囲は一定ではない。そのため、公共財の便益が行政区域を超えて他の地方団体に及んでいくことは避けられず、この現象を、便益のスピルオーバーという。

 

 

 

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