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(5) 地方税源の充実に向けて

1] 意識的に地方税の充実強化を図る必要性

今後、分権の時代において地方税源の拡充を考えると、意識的、積極的に地方税の充実強化を図る税制改革を行っていく必要がある。地方分権の時代に、増税の時に国税の割合が高まるような税制改正をしていたのでは、いくら地方税源の拡充と言ってみても始まらない。逆に、所得課税の減税が必要だとしても、所得税と住民税の間で従来の比率をベースに痛み分けのような決着をする必要はないのであり、地方の自主財源の拡充が必要ならば、地方税の減税は最小限に抑えるか、現状維持とすることも当然あり得べき選択肢である。

 

2] 地方税充実の意義と方法をわかりやすく明確化する必要性

地方分権の進展に伴う地方税の充実強化の必要性については、上記の各種文書等を始め、政党の公約や各種団体の提言、学術研究、マスコミなどにおいて、一般論としてはすでに広く認められているところである。また、充実すべき税目についても、(1)3]に掲げた政府税調中期答申の指摘が最大公約数的なものとして受け入れられているものと考えられる。

しかし、地方税の充実強化については、総論賛成各論反対といった議論がされることも多く、充実すべき具体的な税目とその規模はもちろん、税の仕組みについての必要な見直しについても、できる限り具体的に分かりやすく提示することが、大きな推進力となるものと思われる。

なお、政府税調中期答申においては、国と地方の税源配分の見直しについては、国・地方を通ずる財政構造改革の議論の一環として取り組むのが適当とされている。これは、見直しの時期に関する指摘であると同時に、地方税源充実の意義にも関わる重要な指摘であると考えられる。

すなわち、自主財源である地方税を充実し、国からの財源への依存度をできるだけ少なくすることにより、地方公共団体の財政面における自立度が高まり、各種の行政サービスによる受益と負担の対応関係がより一層明確化するので、地方税の充実は財政構造改革の推進に寄与するものと考えられるからである。

 

 

 

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