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バブル崩壊後、「地上げ」が行われなくなり、更には都心への人口回帰傾向が明らかになりつつある中で【図1参照】、今後更に都心居住を推進していくとすれば、その前提として、その目的・意義を再度考え直してみる必要があろう。いいかえれば、都心の人口減少がなくなる又はゆるやかなものになれば、都心居住を推進しなくてもよいということになるのであれば、そのレベルの対症療法的施策にすぎなかったことになる。ただ、21世紀を展望した都市の住まい方として推進するとなれば、都市計画の大きなテーマとなりうるものである。

バブル期に唱えられた都心居住の目的・意義は、当時の都心部の地上げに伴う定住人口の減少やコミュニティの崩壊という目前の危機的状況を反映して、人口流出防止の色合いが強い。例えば「都心人口減少と行政対応―東京都心三区の定住人口確保策―」東京市政調査会(平成3年)では、定住人口の現象による影響として、以下のような点をあげる。

1] 行財政運営への影響

2] 地域社会への影響

・コミュニティ機能の低下

・近隣商業・サービス機能の低下

・生活環境の悪化

・防災・防犯上の問題

3] 学校教育への影響

・児童生徒数の減少による小規模校の発生

・学校統廃合の必然化

4] 昼間人口の増加に伴う影響

・道路、公園、駐車場及び公衆便所の整備の必要性

・社会教育、社会体育、図書館等の学習・スポーツの場の提供の必要性

また、平成2年に千代田区まちづくり推進公社がとりまとめた「居住空間確保のための協力金検討研究会」報告書によれば、都心居住施策の論拠としては、以下のものがあげられている。

 

 

 

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