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第1章 総論

 

1. なぜ都心居住を進めなければならないのか

 

(1) これまで唱えられてきた都心居住施策の論拠

「都心居住施策」の必要性については、昭和60年代からバブル崩壊にかけて、地価の高騰に伴う大都市都心部の人口減少が顕著となるにつれて、強く唱えられるようになり、平成に入って多<の都市において、都心居住推進施策が採られるようになった。

【表1参照】

 

【表1】 都心居住施策を開始した時期

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※東京都及び指定都市へのアンケート結果(平成12年8月実施)

 

しかしながら、なぜ、地方公共団体がコストをかけて都心居住を進める必要があるのか疑問視する声も少なくない。例えば、東京大学空間情報科学研究センターの八田達夫教授は、以下のように述べている。「都心居住政策が打たれてきた政治的理由は明白である。都心の住民がいなくなると、法人課税の都心区への配分が減る。都心選出の政治家は定数が減って困る。さらに都心の各区や市の役人にとっては、それら役所の存在自体が危ぶまれ、死活問題である。したがってなりふりかまわず、居住人口を増やしたい。そのためには、無駄な財政資金を使い、民間にはオフィスビル建設に余計なコストをかけさせても、居住空間を付置させようとする。このような政策の魂胆がみえすいているだけに、都心居住促進策にはある種のいかがわしさがある。」

(平成12年10月:都市住宅学会社団法人化記念講演会レジュメ)

 

 

 

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