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また、比較的独立した公的委員会や専門家の手による報告もある(たとえば、Schick, 1996; Task Force onマネジメントImprovement, 1992)。また、会計検査制度による会計実績もある(例えば、Auditor General of Canada, 1993, 1997; National Audit Office, 1995)。これらをひとまとめにしても、まだ多くのギャップが多々あるが、それでもラフな概略を描き始めるには十分である。その構図から最初に伝えられるのは―不運なことに―「一群の単純で完結した明瞭な経験から得られた教訓に基づく直接的な合理的適合はない」(Olsen and peters, 1996a, p.5)ということである。それどころか、存在するのは、矛盾した情報と、曖昧で変化のする現実である。

 

こうした状態は合理主義者にとっては(あるいは、われわれが誰しも持っている合理主義的傾向にとっては)腹立たしいもののように見えるが、ブルンソンの著書が示唆するとおり、いくつかの積極的利益をもたらす。政治的な観点から見れば、たとえ具体的な行動の可能性が限られているという諸条件の下にあっても、高尚な(だが、対立する)理想論を論じることができるようになる。

 

行動の非現実的な高尚さや内部矛盾のために、我々の最良の価値は行動のなかには十分に反映されていないので、我々はめったに行動を高い価値とは考えていない。高い価値を維持するためには価値と行動との矛盾という罪を犯すことにもなる。そして、行動に適応しないか、もしくは適応できない規範が唱導される場合には、偽善が必要とされる。高いモラルを創りだし維持するには、罪と偽善が必要なのだ。罪も偽善も持ち合わせない人間はみずからのモラルを売りながら、目的を追求したり、これを唱導したりするひとである(Brunsson, 1989, p.233-4)。

 

本章の以下の部分は、それぞれのいくつかの項をもつ7つの節に分かれている。まず本章第2節(5.2)で、結果が明らかにされ評価される多くの様々なレベルを識別する。その次の4つの節(5.3-5.6)で、これらのレベルのそれぞれに利用可能な代表的な証拠を検討し、(山ほどある)解釈の問題についても検討する。最後(5.7)に、パブリック・マネジメントの改革の結果について、解明した点と、未解明な点をまとめていく。

 

5.2 結果の簡単な分類

 

結果の4レベルを以下の通りに識別することは有益であろう。

 

第一は、業務結果である。これは、ひょっとすると「結果」のもっとも単純で、もっとも具体的な切り口かもしれない。原則的に、作用に関わる結果は個々に独立していて計量可能である。投入は同じでも、出力は増加する。追加支出がなくても、目標対象人口のパーセンテージがあがるため、プログラムは成功する。警察が車泥棒を断固として取り締まり、車強盗の被害に遭う車両数の半減に成功する、などである。業務結果はミクロ、メソ、マクロ規模で見出せる。例をあげるなら、地方事務所は同じサービスを提供するためにスタッフ数を一人か二人は減らせる(ミクロの結果)し、政府は公共支出全体の増加率を抑えられる(マクロの結果)。

 

 

 

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