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第3章 何艘もの舟:政治行政体制

 

「船頭多くして、船山に上る」

(Paavo Haavikko, in Lomas, 1991)緒言

 

3.1 マネジメントの改革の出発点

 

前章において展開したパブリック・マネジメントの改革モデルは、マネジメントの変化のプロセスへ影響を与えるものとして、現行の政治行政システムの特徴に相当の力点を置いた。これらのシステムは、言うなれば、現在の地勢―改革者がたどるべき地形図―を提供している。この比喩を続けて用いるとすれば、明らかに、様々な国は様々な構造的特徴を示しており、それゆえ改革の遂行を望む人に様々な難題を提示している。本章では、こうした違いの適切な分類を行い、それから、この分類を用いて、本書の範囲に入る10ヶ国を検討し、位置づける。また、われわれの研究で11番目の統一体―欧州委員会―にもこの戦略の使用を試みるが、この比類ない事例への応用はそれほど簡単ではない(本章第8節)。

 

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一方、われわれが想起すべきは、政治=行政システムを、ある種不変の基礎的事実として考え、どの改革もこれにみずからを順応させるか、さもなければ失敗するものと考えるのは誤解だということである。われわれは、こういう見解はとりたくない。われわれのモデル(図2.1)は、どの要素も速度は異なるが、変化の対象となる。それゆえ、政治制度(たとえば、憲法)と行政制度(たとえば、上級公務員の教育や文化の特徴)の基本でさえ、時を経るうちに変化する。本章冒頭のパーヴォ・ハーヴィコの詩から引用した一節は、状況をよく要約している。しかしながら、この種のシステムの特徴は、漸進的にしか―でなければ、滅多に―変化しない傾向があるため、たとえば経済力やマネジメントの理念の手法の変化に比べ、改革者の環境がもつ安定した/非動的な特徴とみなされることがある。

 

 

 

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