日本財団 図書館


本章の最後(第3章第9節)では、近年改革が開始されるべきだ―改革は回避されるべきだ―という声がさかんに聞かれる、他のタイプの体制―旧体制―や「伝統的官僚制度」について論評する。また、このような過去の描写の正確さや、「官僚制」に対する現代の議論における明示的・暗示的な価値の移行について、いくつかの問題を提起する。

 

3.2 政治=行政システムの重要な特徴

 

最初から、政治学と行政学を研究するための比較によるアプローチは、ある国家もしくは準国家的管轄区を他のそれと比較するための、もっとも思慮に富み、かつ啓発的な基礎を選定するための特徴はなにか、という問いと密接に関係している。紀元前4世紀アリストテレスはすでに、もっとも重要な側面となりうるものを示唆している。

 

良い政体には、君主政体、貴族政体、政治政体の三つがある。悪い政体には、僭主政体、寡頭政体、極端な民主政体(アリストテレス)の三つがある。(Aristotle, 1963, p.12)

 

比較研究法の歴史における、これまでの2300年間のよじれやひねりのすべてに答えることはわれわれにできることではないので、とにかくわれわれ自身の選択を説明し正当化しておこう。

 

一見したところ、マネジメント改革のプロセスに影響を与えそうに見える特徴に関心を絞ることが、道理にかなっている。幸運なことに、そうした特徴がどんなものでありうるかを示唆する関連学術論文には不自由しない。一般に、第一級の著者によって同定された重要な要素は、‘構造’、‘文化’、‘機能’に関わる要素を内包している。そのうちで、われわれが選んだものを、以下に挙げる。

 

1. 国家構造(憲法も含む)―これは明らかに構造的特徴である。

2. 中央レベルでの行政府の性質―これは、構造的要素でもあり、機能的要素でもある。

3. 為政者(大臣)と最上級官吏(高級官僚=マンダリン)との関係が機能する仕方―機能的要素だが、付帯的に文化的含みを持つ

4. 支配的な行政文化(従来は‘正しい政府’という基本理念の上に樹立された文化と「公共の利益」モデルを志向する文化とに分けられる)―これは文化的要素である。われわれはここで、行政文化の方を採ることにより、組織内でなにが「ふつう」でかつ「受容可能」であるかについての、組織スタッフの期待について言及する。こうした信条と姿勢は、組織のシンボルや儀式、来歴、冗談、それに神話といった、多種多様かつ無数の方法でみずからを明らかにする(Geertz, 1973; Handy, 1993)。文化は国によって異なるし、実際のところ組織によっても異なる。

5. パブリック・マネジメントの改革をあおる理念が流入する主要なチャンネル間の多様性の度合い―これは文化的要素と機能的要素との双方を反映する。

 

これら五つの重要な要素を表にしたのが、表3.1である。以下の節では、これらの要素のそれぞれについて論じる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION