日本財団 図書館


さらに、ある特定の改革が、上述の目標のうち1つか、2つ(たとえば節約、それに品質向上)において明らかに「成功をおさめた」にせよ、あらゆる点で成功することもありそうにない。実際、後に論ずるが、行政の変化においては、ある種のトレードオフとジレンマが大方一般化しており、1つか、2つの特定の結果を達成すれば、その他の点でさほど成果が上がらなくても相当の「甲斐があった」と言えよう。というのは、「官僚制の中で意思決定に特化している者に対する統制は、一度に1つの目標についての厳選された断固たる措置によって維持され―1つの判断基準につき取り締まるということは、他の基準については緩めることを暗に示唆していると認めないわけだが―安定に向かう(Dunsire, 1993, P.29)」からである。たとえば、公務員を、もっと効果的な政治による監督と統制の下に置くというムチを使う場合、アメとしての管理の自由と柔軟性の増大を彼らに与えることが可能だろうか。楽観主義者なら、管理者が「クリエイティブ」になり得る範囲内で、規則に、より透明度の高い、より単純な枠組みを与えるのであれば、それは「可能だ」と答えるだろう。懐疑主義者は、「不可能」だと言うだろう。というのは、管理者自身が政治的な「干渉」が‘増加’すると考えていることを調査データが示しているからであり、また政治家が社会保障、保健、教育もしくは刑務所内のサービスなど政治的に微妙な活動において「静観する」ことを期待するのは非現実的だと論じているからである。

 

いかなる場合も、パブリック・マネジメントの改革は、第一段落で同定された好ましい目的の大部分を達成する唯一の方法である。適切な表現をするなら、パブリック・マネジメントの改革の性質につき、いかなる判断を下すにせよ、政府実績を向上させるにはさまざまな道があること、そしてマネジメントの改革はタイプを異にする政策イニシアチブとの結合において実行される場合が多いことを考慮に入れる必要があるということだ。何ヶ国もの行政の進化を比較した、ある学者は近年、以下のように述べている。「行政改革は……政策遂行能力の‘すべて’の組み合わせであり、独立した一組の技術的努力ではない(Ingraham, 1997, P.326)」。

 

政府能力を向上させる手順としては、たとえば‘政治改革’(たとえば選挙制度や立法手続の変更など)や‘最重要政策’の実質的変更(新マクロ経済管理政策、労働市場の改革、社会政策の抜本的変更など)があげられる。本書の序文では、ニュージーランドの例―初期においてはマクロ経済政策、後年には選挙制度の抜本的変更をともなうマネジメントの改革―について漠然とではあるが、言及した。

 

問題をさらに複雑化するなら、多くの識者が指摘しているように、遅延はパブリック・マネジメントの改革の大部分に影響を与える。省庁の手続きや構造を大きく変えることの利点が結実するのは、通常、改革プログラムが離陸してから3年、4年、5年、あるいはそれ以上の歳月を経た後である。先ず、新しい法律が必要とされるかもしれない。しかる後に、現状分析が必要とされ、その後に新しい手続きについて構想を練り、計画案を作り、もっと磨き上げ、それらをどのように機能させるか、スタッフを訓練し、新しい任務と適当な報酬・評価システムを定め、適切な場所に測定システムを組み込み、サービスの利用者やその他の投資者グループへの通知を行なうなど、これらすべての新事業が利用者の間にもスタッフの間にもおそらくは惹起するであろう懸念を抑えるため、熱心に努力しなくてはならない。だが、古参の政治家は、こういう悠長なスケジュールに良い顔はしない。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION