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彼らのもっと熱い関心の的となるのは、短期間の事象(たとえば次の選挙や次の内閣改造。時にはなんと今日のテレビのニュース)である。政治家の関心の探照灯は、一つの問題から他の問題へとあまりにも速く移動するので、複雑な組織変更は無理である。これが毎度くりかえされる事実だ(Pollitt, 1984, pp. 148-9)が、多くの西欧民主主義諸国において広く見られる政治的過程の過激化と加速の結果、政治家の「今すぐ披露するための何か」を求める強い欲求と、組織改革者の、時間や関与、継続を求める欲求とは、おそらくますます齟齬を来すようになるだろう。

 

1.2 パブリック・マネジメントの改革とはなにか?

 

だが、パブリック・マネジメントの改革とは‘いかなるもの’なのだろうか。これは、定義に関わるあらゆる疑問と同じく、何通りもの答えがあり得る。最初の近似値として、‘パブリック・マネジメントの改革とは公共部門組織の構造と手順の計画的な変更で、公共部門の運営を(いくつかの意味において)より良くするという目標を掲げるもの’という定義があげられよう。構造変革とは、たとえば公共部門組織の併合や分割である(すなわち部局間調整がよりよく行われるようにする目的でより少数の大きな部局を作るか、もしくは注意がより集中的に傾注されるとともに専門分野への特化を促進する目的で、より小さな部局をより多く作ることである)。手順の変更には、たとえば免許や助成金、パスポートの申請の取り扱いシステムの再構築、市民に対する保健サービスや教育的サービスの品質基準の設定、コスト意識を高めるため、および/もしくは支出によって創出される結果をもっと詳細に監視するための、新しい予算作成手続きの導入といったことがあげられる。マネジメントの改革はまた、しばしば公務員の補充、訓練、評価、昇進、懲戒を行うシステムの変更を含む―これらも、種類は異なるが、手続きの変更だろう。

 

パブリック・マネジメントの改革とは何かをこのように詳述するなら、たいへん洗練されてはいないにせよ、役には立つ。第3、4および5章では、多種多様な国々、そして欧州委員会の構造と手続の特徴が論じられる。しかしながら、定義という問題に取り組む方法は、それだけではない。関連文献にはもっと分析的、あるいは大観的な定義が多数示されているし、これらのうちのいくつかは、この問題に関する最新の考えの幅について感触を得るためだけなら、研究するに値する。われわれの定義についての研究は少なくとも二つの部分、すなわち「パブリック・マネジメント」、「改革」から構成されている。まず、パブリック・マネジメントを取り上げる。

 

1. 「パブリック・マネジメントは、伝統的な行政の規範志向と一般的経営の手段志向とが合併したものである。」(Perry and Kraemer, 1983, p.x)

 

2. 「パブリック・マネジメントは、画一的に定義するより、分析的に定義する方が良い。明瞭で画一的な定義はあり得ない…パブリック・マネジメントの必須の領域とは、たとえばサービス提供や予算決定過程における組織の相互依存性を管理することである。パブリック・マネジメントは組織のシステム全体の効果的な機能に関連する…。パブリック・マネジメントを特徴づけるものはなにかといえば全体としてのシステムのレベルで組織的な諸問題を取り扱う責任が明確に認知されることである。」(Metcalfe and Richards, 1987, pp.73-5)

 

 

 

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