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その上、われわれの、効果的な制度の設計についての知識は、われわれがふつう認める気になるよりもっと非科学的で、むしろ箴言なのだろうか(Goodin, 1996; Hood and Jackson, 1991; Simon, 1946)。少なくとも、かかるタイプの改革がそれ自身の衰退の種を内包していることを示唆する証拠がいくつかある。分権化した、単一目的を実現する省庁の組み合わせ―カナダ、オランダ、ニュージーランド、イギリスなどでよく行われた改革―を考察してみよう。これらの新しい組織は、脱官僚組織化の名目で創出され、生産性を向上させ、利用者責任を拡大させる。しかしながら、数年後には、全体的な有効性より、こうしたプラス面の「背面」、主として協調の亡失、産出目標への注意の過度の集中、大臣および/もしくは議会に対するアカウンタビリティの現象といった点について、不安が高まる。その他、官僚による成果を向上させるための個々のインセンティブを強化し、かつ企業者主義を促進させるための努力と、他方いくつかの事例においては、実績主義の給与構想と、公務員の信頼を強化し、一定の倫理規範を再樹立するという主張との間の断列が懸念されるようになった(たとえばBoston et al., 1996, pp.327-32; Chapman, 1998; Kernaghan, 1997)。いくつかのパブリック・マネジメントにかかわるイニシアチブが、実際問題としては、行政に関わる諸問題を解決すると言うより、行政のジレンマを核とした悪循環に陥る結果となる可能性があるのだろうか。

 

最終章である第8章では、開発されつつある、民主的統治の枠組みの範囲内で、パブリック・マネジメントの役割にかかわる「大問題」に立ち返り、この問題に簡単に触れる。過去20年間の世界各国における経験によって、「将来への教訓」を引き出す上で信頼するに足る知識が生み出されたのだろうか。これは、生み出されたとも、生み出されなかったとも答えがたく、本書を締めくくるにふさわしい問いである。

 

 

 

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