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次に、第2章で、マネジメント改革のモデルを提示する。始めに、上述のマネジメントの変化の波を惹起してきたかに見える刺激を確認する。政治家や官僚を促して、行政の近代化と変化の手段を入手する方向に向かわせた諸問題とはなにか。こうした、認知された諸問題は、理念の主たる流れや政治的関心と政治権力の作用、世論の改革を目指して具体的な議案を創出しようとする動きとの間で、いかに相互に影響し合ってきたのか。これらの議案がどの程度実現されるかに対して、いかなる制限や歪曲が影響を及ぼす可能性があったのか。本書の基本的な主張は、世界各国が主たる構成要素を多種多様な方法で組み合わせ、料理してきたにせよ、かかる要素の一般的なモデルもしくはメニューを構築することは有益かつ可能だということである。

 

第2章ではマネジメントの改革について議論をするための概念に関わる一般的な用語を確定したのに対して、第3章では本書が選んだ10ヶ国間の差違とともに欧州委員会独自の特徴にも重点を置いた。第3章では体制のタイプ別分類法を確立し、各国をこの図式の中に位置づけた。いくつかの事例ではマネジメントの変化の可能性そのものが、特定の国や部門に特有の憲法、政治もしくは制度の特徴のために―少なくとも短期的には―他国より乏しい国もある。ピーターズは、上述した問題において、行政の初歩的な諸問題の多くが関係していることが判明するものと考えている。たとえば、1980年代にイギリスの首相は首都の統治責任を負う地方自治体の権限を廃止したが、フィンランドやスウェーデンでは、首相は憲法上も政治上もこの手の変化を起こすことができない。また、エリート政治家とエリート官僚―いずれもマネジメントの改革に不可欠―は、各国間で相当に異なっている。フランスでは、この2種類のエリートは相互浸透が徹底しているが(たとえば「高級官僚(いわゆる‘マンダリン’)」はしばしば大臣になる)、カナダやイギリスでは、この2グループの隔たりは大きい。

 

第4章では、特定の国が採択した理念、行動、不作為の可変的な組み合わせを詳述するために「軌跡」という概念を用いる。2ヶ国、もしくはそれ以上の国は、おおざっぱな見方をするなら、第3章で確認されるとおり、最終的には同様の目標を目指しているにせよ、それぞれの軌跡を異なる場所で開始するため、多少は異なる領域を通過するのではないかという直観的な判断がある。しかしながら、それぞれの軌跡に何らかの普遍的な検証を用いることは可能である。たとえば、軌跡がいかに首尾一貫しているのか、たとえば財政、人事、および組織構造などの分野における改革は相互に調和し、相互に強化し合っているのか、全体的に見て、いくつかの分野もしくはセクターが改革過程の対象外とされているのか、指針となる強力な考え方や理論があるのか、あるいはより細分化された「具体的な目的別」アプローチがあるのか、といった検証である。

 

第4章で主たる軌跡が詳述されるので、第5章では改革結果の証拠の探索に転じる。まず、本書はなにを「結果」と考えるのか、またどれほど異なる種類の影響が考えられるのか、について、多少の考察を加える。

 

 

 

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