日本財団 図書館


太東崎ではコンクリートの人工構造物で覆われた海岸線という光景を目にすることになりますが、太東崎に限らずいま、日本の海岸では法律に基づいてさまざまな工事が行われています。

海岸にまつわる法律体系としては、「海岸法」、「漁港法」、「港湾法」の主に3つあります。今日の海岸見学会では、主にその中で「海岸法」と「漁港法」に基づいて行われる様々な工事について見ていただこうと思っています。

海岸法に基づいて工事をするときには、海岸保全区域というものを設けなさい、と法律に規定されています。海岸保全区域というものは何かというと、春分時の満潮時汀線から陸側50メートル、干潮時汀線から海側50メートルという、帯状の区域を保全区域として定めて、その中で工事をやりなさいと書いてあるわけです。

 

実際には絶対値で50mというのではおかしなケースもあるわけです。日本の海岸の海底勾配というものは実に多様で、一番きついところでは2分の1勾配というのがあるんです。これは例えば静岡県の三保の松原がそうですけども、2分の1勾配ですから50メートル沖の水深が、ざっと言えば50÷2で、25mになるわけです。

ところが、この九十九里浜は、勾配が緩いところでは100分の1ぐらいですから、沖合い50mの水深が、たったの50cmしかないんです。

ちなみに干潟で有名な九州の有明海などは、600分の1とか700分の1勾配です。以上のように日本の海岸線は多様な地形を有するわけで、絶対距離で保全区域を定めている点に苦しい部分があるのですが、そうは言っても、法律でそう定めて今までやってきているので、ちょっとおかしいなと疑問を感じるわけです。

 

海岸法

津波や高潮、地盤の変動による被害から海岸を防護し、海岸環境の整備と保全の海岸の適正な利用と国土の保全を目的に、昭和31年(1956)に制定された。

 

漁港法

水産業の発達を図り、これにより国民生活の安定と国民経済の発展とに寄与するために、漁港を整備し、及びその維持管理を適正にすることを目的に、昭和25年(1950)に制定された。

 

港湾法

この法律は,交通の発達及び国土の適正な利用と均衡ある発展に資するため、港湾の秩序ある整備と適正な運営を図るとともに,航路を開発,及び保全することを目的、昭和25年(1950)に制定された。

 

海岸保全区域

津波、高潮、波浪その他海水又は地盤の変動による被害から海岸を防護し、国土の保全に資する必要があると認められる海岸の一定区域。都道府県知事がこれを指定することができるが、指定する区域は、海岸法の目的を達成するために必要な最小限度の区域(原則として陸地においては満潮時の水際線から50m、水面においては干潮時の水際線から50m)とされている。

 

汀線

海岸線のこと。陸と海の境界線部分。

 

三保の松原

駿河湾に突き出た砂嘴(三保半島:静岡県清水市)に広がる全長約20kmの砂礫海岸。急深な駿河湾に面しているため、海岸の海底勾配がきつい。天女の羽衣伝説で有名な風光明媚な海岸だが、ここも深刻な海岸侵食にさらされている。(写真 海岸研究室(有))

 

007-1.jpg

 

有明海

長崎県、佐賀県、福岡県、熊本県に囲まれた総面積約1,700km2の東京湾とほぼ同面積の浅く平坦な海底の内海。海底勾配は600分の1以上。

水深は深いところでも30m程度で、干満差が最大で5mほどと潮の満ち引きが大きく、それに伴なって出現する広大な干潟が特徴。大潮の干潮時には約8,600ヘクタールにも及ぶ干潟が出現する。干潟のドロ(軟泥)にはムツゴロウなどの珍しい生物が生息する。1997年4月14日、諫早湾の干拓事業に伴なう潮止め堤防による閉め切り工事は社会的にも大きな反響を呼んだ。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION