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あと厚生省に対してお願いしたいことをちょっと言います。厚生省の方には、やはり在宅で死にたいという人を助けてほしいということのほかに、老人を荷物のように3ヶ月で移動するのはやめてほしいということです。それは老人が入院する前から「3ヶ月で治らなかったらどうしよう」と心配しているんですね。病人が、ことに老人が環境が変わるということは大変なことです。それだけど、家族が大変だからとか、何とか治らなくてはと思って、やっと我慢して、病院に入院して、それで3ヶ月、やっと知り合いもできて、友達もできて、看護婦さんの顔なじみもできたところで「はい3ヶ月」といって宅急便の荷物みたいに他の病院へ運ばれるのはあまりにも非人間的です。それをぜひやめてほしいことと、それからこの間、東京の日赤に緩和病棟ができましので行きましたけどね、そのときに保険で入れる病室は2つなんですね、17のうち。あとは1日2万円、1日4万円、1日6万円という病棟です。公的資金で半分は出るとしても大変な額です。だから、私、びっくりしましてね、やはり厚生省には保険で入れる病院をたくさんつくってほしいということをぜひお願いしたいと思います。

私ももう73です。日野原先生は75から新しいことをやれとおっしゃっていますけど、私は73ですから、いつ銀河鉄道がうちの前にガラガラと停まって、「はい、お迎えにきました」て戸が開くかわかりません。だけど私は心あたたかい病院というのは、この私が死んだらやめちゃうということはちょっと残念なんです。それで、今日いらしてくださった方のなかで、「ああ、それじゃあ私たちもそう思うから、私たちの生死にもかかわっていることだから、21世紀にも遠藤さんが言っていた心あたたかい医療というのをつづけていこう」という気持ちのある方があったら、どうぞご自分の居場所で無理なさらなくていい、ご自分の居場所で、自分のぶつかったところで心あたたかい医療というのをぜひこれからもつづけていっていただきたいと思います。主人は弱かったために心あたたかい病院というのをやりだしたと思いますけど、でも、それは結局はキリストのまなざしを継ぐということだと思います。キリストは元気もりもりという人のところにはご自分からはあまり近づいていらっしゃらなかったんですね。キリストが近づいていらしたのは、長血を患っている女とか、ハンセン氏病でみんなからあっちへ行け、あっちへ行けと石をぶっつけられているかわいそうな病人とか、罪を犯したやつだからといって棒で叩かれている娼婦だったり、そういう弱い立場の人です。その弱い立場の人に対するキリストのやさしいまなざしというのを主人もやっぱりクリスチャンとして継ぎたかったというのが、この「心あたたかい病院」の根本にあると思うので、どうかそれを皆さんで21世紀にも継いでいっていただきたいと思います。ありがとうございました。

 

司会 遠藤さん、ありがとうございました。

 

司会 それではここで「富岳太鼓」の皆さんによります和太鼓の演奏をお贈りいたします。「富岳太鼓」は、富士山の麓、御殿場市で社会福祉法人富岳会の山内令子理事長が、知的障害施設の利用者に日本太鼓を使ったセラピーを導入しようと着目し、1977年に設立されました。メンバーは、富岳会の施設に勤務する指導員や保母を中心に、日々錬磨しながら活躍されています。

演奏技術は全国的にも高い評価を得られており、国立劇場主催の「日本の太鼓」公演をはじめとし、数多くのテレビ出演、海外公演など、年間50回を越える演奏活動を行なっていらっしゃいます。

 

 

 

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