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ハ) シロアム号事件

1923年4月24日、カナダ沿岸警備船Malas ponaは、カナダ領水内で、合衆国の漁船シロアム号が違反漁業に従事しているのを発見した。警備船はシロアム号に並航し、口頭で停船を命じたが、シロアム号はこれを無視して沖合に向けて航行を続けた。警備船船長は、6ポンド砲による空砲をシロアム号船首方向に3発発射するとともに、停船命令を繰り返した。これに対して、シロアム号側はライフルを持ち出し、警備船に照準を合わせて威嚇した。警備船は6ポンド砲によりシロアム号船首方向に実弾4発を発射したが、なお同船は航行を続けた。警備船は、更に停船を命じ、さもないと撃沈すると警告し、なお従わないシロアム号に向けて、損傷を与えるため、砲を7発以上発射したが命中しなかった。そこで警備船は停船命令を繰り返すと共に、シロアム号に向けてライフル4丁の一斉射撃を行ったが効果がなく、次に、操舵機を損傷させるため舵機室への一斉射撃を行った。この射撃により、シロアム号乗組員1名が負傷し、シロアム号はようやく停船した。負傷者は、警備船に運ばれた。警備船は、カナダ領海内において、とりあえずシロアム号を拿捕したが、シロアム号はその乗組員によって穴を開けて沈没させられ、乗組員はボートで逃走した。警備船に移された負傷者は、同船が港に到着前に死亡した。カナダ政府は合衆国政府に報告書を提出したが、合衆国は、この事件について抗議をしなかったといわれる(21)

 

(2) 国内の事例・ラズエズノイ号領海侵犯事件

昭和28年8月8日、稚内海上保安署(当時)は、ソ連領樺太から北海道に密入国した諜報工作員をソ連スパイ船が再び迎えに来るとの情報に基づき、巡視船「ふじ」、「いしかり」を知来別海岸に配備して警戒していたところ、「ふじ」が、諜報工作員出迎えのため同海岸に接近したソ連巡回艇ラズエズノイ号(19トン、15ノット、乗組員4人、以下ラ号と略))を発見した。

 

 

 

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