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6. おわりに

 

ここでは、海上警備に関する近年のフランス国内法制を検討してきた。1996年法による統合された、海域における実力行使を含む執行権行使に関する法制は、1994年法1条が明白に国際法の尊重を規定しており、国際法上認められた執行権行使の国内法上の根拠を整備する趣旨であると解することができる。これに比して、1985年の無害通航に関するデクレでは、多くの国連海洋法条約規定をそのまま写しながらも、無害通航の国際法上の権利性や沿岸国の権利への制限に関する条約上の規定を、巧妙に排除している。こうしたデクレの基本的立場からすれば、上で批判的に検討したフランスの学説が、有害性の認定において沿岸国の裁量を強める解釈を提示するのは、沿岸国の利益をより一層強く保護するものといえよう。しかし、同デクレの基本的立場は、国連海洋法条約に対して適合的ではない。こうしたデクレの基本的立場の認識にたって、船舶の有害性認定に関する具体的なフランスの国家実践に注目していく必要がある。

 

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