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具体的な法執行については、CROSS及び海事局の船舶によって行われることになる。

 

(5) 沿岸警察

市町村法典131-1条によれば、市長(maire)は、市町村の領域についての一般的警察機関(市町村警察機関)と位置づけられる。フランスの行政判例法は、市町村の領域について、当該市町村に隣接する沿海域が含まれることを認め、さらに、市町村を縁取る海岸公物全体が含まれることを認めている。従って、沿岸及びそれに隣接する従物に加えて、当該市町村の地先沖合たる内水及び領海の土地及び地下も、当該市町村の市長による一般的警察権限に服するということになる(但し、海水は公物ではない)。

一般原則は右の通りであるにしても、現実には、沖合12海里まで市町村警察が及ぶことの意味は小さいのであるし、領海たる海域についての法執行機関としての管轄を持つ海軍軍管区司令官の権限との関係を整理する必要がある。このような観点から、1986年1月3日の沿岸法は、沿岸・領海について、市町村警察と国の統治権の現れたる海上行政警察との配分について、一定の改革と明確化を行った。

沿岸警察については、港内と港外とに分けて論じるのが便宜であるので、以下、港内の行政警察と、港外の沿岸に関する行政警察とに分けて概観する。

港内の行政警察は、基本的に、国の港湾警察権限を、当該港に関する管理権限を持つ行政官庁が執行するという構造になる。すなわち、港湾の保全と管理について、市長(レジャー港)、港長(独立港)、県会議長(県営港)、知事(国営港)がそれぞれ行政官庁として警察権限を行使する。軍港を除く全ての港湾について、知事が、水質及び航路標識に係る警察権限を負う。軍港については、海軍軍管区司令官が警察権限を負う。ただし、以上の港湾警察権限は、フランス行政法に言う「特別警察」であり、当該港湾の所在する市町村の市長による一般的警察権限、及び、関連する知事の一般的警察権限を排除するものではないと考えられている。

港外の行政警察については、沿岸法が、市長の一般的警察権限と、海事に関する国の行政官庁の権限との確定を行っている。すなわち、沿岸法31条は、市長による市町村警察の権限は原則として水際線(低潮線)まで及ぶものとし、その外側は海軍軍管区司令官の管轄という整理がなされる。

 

 

 

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