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さらに、沿岸法32条は、市長は、水際線から300メートル沖合までの範囲において、水浴及び一定の水上活動について、特別の警察権限を行使できることを定めている。その他、沿岸警察については、フランスの公物管理法制全体と関連した複雑な法制度があるが、ここでの紹介は割愛する。

 

(6) 海洋環境警察

海洋環境の保全は、フランスにおいても重要な課題として認識されている。海洋環境警察として論じられているのは、地下資源の採掘や漁業活動といった海洋公物の利用の規制に係る法規範のみにとどまらず、海洋への汚染物質の投棄・廃棄の規制による海洋生態系への影響の回避、石油や放射性物質の海上輸送の際の事故によるリスクに対処するための措置、自然公園や自然保護区の設定により海洋空間を保全するための法制度といった事柄について、様々な法的規範が設けられ、行政警察として実施されている。

 

(7) 海上における実力行使に関する法令

以上、フランスにおける海上警察法の内容を概観してきたが、これらの行政作用法について実効性確保をはかるための、海上における行政機関の実力行使に関する法令のあり方も重要な問題となる。この点について、フランスでは、1994年7月15日法(海上における取り締まり権限の国家による行使の手段に関する法律)が制定されているほか、1995年4月15日政令(海上における強制権限と武力の行使の手段に関する政令)等の法令による法制度上の整備が行われている。これらの法令の状況については、本報告書において、兼原委員が調査研究を行っており、そちらの記述に譲ることとする。

 

(8) フランス海上警察法の特色

ここまでの検討を踏まえて、フランス海上警察法の特色について、改めて簡潔に整理しておきたい。

海上警察に係る執行機関については、その多元性が指摘できる。フランスにおいては、警察一般について、国軍と国家警察とが、行政警察及び司法警察を多元的に分担するというシステムが形成されているのであるが、海上警察についても、海軍軍管区司令官や憲兵隊といった国軍の組織が、重要な役割を担っている。

 

 

 

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