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3.3.3 海氷状況

 

NSRが総て海氷で覆われるのは、11月から4月までの冬の半年である。この冬の期間、バレンツ海の一部を除けば、北極海全域が海氷で覆われる。NSRの沿岸部を一年氷が多年氷を混入させながら定着氷を形成し、定着氷の外縁沖を水量の多い流氷域が占める。

夏の期間は6月から9月であり、海氷は顕著な融解を見せ、海氷域は広がりと強度が急速に減少する。夏にほぼ同じ海域に毎年出現するアイスマッシフは、北極海中央部からの多年氷や、厚く積み重なった氷丘を多く含む沿岸定着氷の残骸が集まったものである。

3.2.4に示したようなマイクロ波放射計による人工衛星画像を使って、NSR海域に夏期に存在する海氷域の年々変動を、図にまとめて示した。1979年から1986年の各年7月から10月の衛星画像をもとに、NSR海域を経度10゜ごとに区切って海氷の有無を調べた。各年各月の海氷の存在海域を四角で囲み、密接度の多い所(70%以上)を濃い網目、少ない所(70%以下)を淡い網目で示した。この図から、1979年を除けば、8月と9月にはラプテフ海と東シベリア海の西部は海氷がほとんどなくなることがわかる。夏期でも密接度の多い海氷域が常時存在するのはビルキツキー海峡の両側と、ロング海峡およびその西側である。両海域とも北極海大氷域からの多年氷が南下して、アイスマッシフが維持される海域にあたっている。

このほか、NSRの航行にとって脅威なのは、セベルナヤゼムリヤ氷域、タイミル大氷域、アイオン大氷域、ウランゲル大氷域などのアイスマッシフの出現海域である。

 

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夏季にNSR海域に存在する海氷域(Ono, 1996)

(濃い網目:氷量70%以上、淡い網目:氷量70%以下)

 

 

 

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