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3. 油処理剤の特性

 

油処理剤(dispersants)は、流出油を物理的に変化させる。つまり、微粒子化して自然浄化を促進するために散布するものであり、化学的に変化させるものではない。そういう意味で、一部「油処理剤」のことを「中和剤」と呼ぶ人もいるが、これは誤りである。

油処理剤には、主成分として1種類又は2種類以上の界面活性剤が配合されている。界面活性剤は、親水基と親油基を有しており、油−水界面に界面活性剤が局在することにより、界面張力が低下し、油塊が破断して微小油滴が形成され、水中に分散可能となる。このとき、作業船を航行させて攪拌する等のエネルギーが加えられると、微小油滴の水中分散が促進される。界面活性剤は、そのほか、油滴の再凝集を阻止する機能と界面油膜を安定化させる機能がある。これらの機能により、微小油滴が合体して大型化し凝集することはなく、長時間、微小油滴が持続することになる。また、界面油膜が安定化することにより、海洋堆積物や海浜等の砂等への油滴の付着も阻止される。流出油の影響を最小限に抑えるうえで、この固体表面への付着防止機能は、非常に重要である。

油処理剤には、主成分である界面活性剤のほか、溶剤が配合されている。これは、界面活性剤の多くは粘度が高いので、溶剤を添加して粘度を低下させ、一般的な散布装置を使用するためである。溶剤には、そのほか、油処理剤の散布に最適な界面活性剤濃度を得るための濃度調節機能もある。

 

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図−1 分散のメカニズム

 

 

 

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