以上をまとめると、次のような結論が得られる。図−1のとおり、全体的な油の分散メカニズムには、基本的には次の4つの段階をたどる。
1]油処理剤を原液で、油塊表面に散布する。
2]界面活性剤は油膜を貫通して、油−水界面に到達する。
3]界面活性剤は、油−水界面で定位し、油−水界面の界面張力が低下する。
4]油塊が破断しやすくなり、油は微小油滴となって、攪拌作用により水中に分散する。
流出油が分散されることで、次の利点がある(図−2〜図−4参照 )。
1]分散された油は、潮流により希釈分散し、水中濃度が速やかに低下する。この結果として、陸地に向かって吹き寄せる向岸風の場合にも海岸汚染が防止できる。
2]油が海面から消失するため、海鳥の油汚染被害が回避される。
3]油の海浜漂着と海岸の砂や海底堆積物等固体表面への付着が防止でき、海岸部で油が土壌に浸透して油汚染が長期化する危険が回避される。生物の油汚染被害も最小限に抑えられる。
4]流出油で生じる油中水型エマルジョン(W/O型)やタール状の廃油ボールが形成されることがない。
5]微粒子状に分散されることで、海水中の油の自然浄化が促進される。