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II. 油による海洋汚染

 

国際海事機関が最も可能性の高い値として推定した海洋への油の排出負荷量は、年間に約325万トンとしており、排出源は、大別すると

1]船舶の海上輸送活動に伴うもの

2]生活及び産業活動に伴うもの

3]自然界からの浸出によるもの

である。

全体の約45%をしめる船舶の海上輸送活動に伴って海上に排出する油量は、年間約150万トンと推定され、そのうち約3分の2は、船舶の運航の過程で生ずる油である。これらの油は、国際的な枠組みのなかで予防対策が講じられており、タンカーの構造・設備の改善を図るとともに船内で発生する油水混合物等の管理体制を強化することにより、油の排出量を削減する規制がとられている。

一方、事故によって海洋に排出される油は、約50万トンであり、船舶、特にタンカーによる事故は、局地的に大量の油により沿岸を汚染し、時に長期間にわたって影響を及ぼし、被害の拡大によって地域住民の生活を脅かすこととなる。

タンカー事故による油の排出の主な原因は、衝突、座礁、火災爆発等に起因するものであり、そのためタンカーの構造を二重底、二重船側とし、あるいは中間デッキ構造とする等により貨物艙への損傷を抑え、流出量を削減する対策が講じられることとなった。しかし、このように船体構造が改善されたとしてもタンカーの貨物艙に至る大規模な船体破損を生じる事故においては油の流出を阻止することは困難である。

わが国の油による汚染状況は、海上保安庁の調査によれば、近年漸減しており、油汚染確認件数及び防除措置を実施した件数は、図I. 1のとおりである。

 

図I. 1 油汚染確認及び防除措置件数

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