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海洋囲い込みのプロセスは、今後も継続して行くであろ。国連海洋法条約の多くのギャップ、特に拡大された国家管轄権の及ばない海洋資源に関連する事項は、たとえ非国際的なレベルであっても、言わば接ぎ当てされた状態にある。個々の国家、或いは将来の資源開発者に対して、海洋資源にアクセスする以前に、関連する国際機構に何がしかの費用を支払うことを要求するということは、これは即ち海洋囲い込みの一形態である。海洋資源の使用のために残された自由な海域は存在しなくなるということは、想像に難くない。しかし、誰が何に対して如何なる責任を有するのかを知る限りは、グローバルな管理に向かって着実に前進しているものと言えよう。

国際的海洋秩序の観点からは、国連海洋法条約の成果は紛争管理に係わる条項の規定であると言える。海洋法裁判所は未だ創設されたばかりであり、その成果については不明である。海洋境界線を巡る多くの紛争は複雑であり、解決は容易ではない。そこには国家のアイデンティティー、海洋資源、特に天然ガス埋蔵の可能性等がある。国家の威信をかけたこれらの紛争は、EEZを巡るトルコとギリシャの紛争、或るいは東シナ海における一連の多国間の紛争を見ても明らかである。幸運にも、漁業資源を巡る紛争は取扱いがより簡単であるようである。国連海洋法条約が公海における漁業について義務規定を設けたことから、「魚戦争」は終りに近づいているように思われる141

 

 

 

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