日本財団 図書館


また会議は、「強制的措置について協議」するが、それを執行するわけではない136。更に、新しい機関を設立してそれに加盟しない国に対しては、北太平洋海域のポラック種(訳注:北大西洋鱈科の食養魚)の漁場が含まれている排他的経済水域内への立ち入りを許さず、また漁獲を"阻止する"という試みもなされている137

以上論述したように、北太平洋海域に係る新たな条約は、強力な側面があるにも拘らず、幾つかの大きな弱点がある。つまり、AHL及びINQの決定のためには、全会一致でなければならず、オブザーバー制度が設けられているが138、主張できるのはあくまで国家であることから139、国家の主権は制限されたとはいえ、完全に排除されたわけではないのである。

 

V 結 論

 

国連海洋法条約の主要な主題は、海洋囲い込みである。第三次海洋法会議においては、過去12年余りに亘り協議されてきた事項を整理統合したものと言える。海洋及び海洋資源への自由なアクセスが制限されるときが正に到来したと考えられる。グロチウス的な海洋への自由なアクセスは、過去400年余りに亘り良く機能したと言えるが、現在では些か有効性に欠けると言えよう。海洋への自由なアクセスは、地球表面のおよそ70%を占める海洋の利用に際しては、最もコストがかからない方式であったが、それは今日では最早役不足である。

グロチウス理論の擁護者は、海洋及び海洋資源の管理は海洋の自由なアクセスの下では不可能であるということを認めるように強要するが、一方で国際海峡、或いは国家管轄権の及ばない海域における軍事的、或いは非軍事的な人及び物の移動については未だに彼らの言い分に利がある。沿岸国が自国の管轄権を拡大するのは、今後も国連海洋法条約体制の下で存続してゆくものとみられる。しかし、そのような権利が継続的に援用される限りは、現在の海洋の枠組みは「混成の」、或いはモディファイされた海洋囲い込みの枠組みであると特徴付けることが出来よう140

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION