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既に現存する、或いは新たに作られる地域機構は、次の事項について責任を有するとされている。即ち、 (1) 魚種の存続性の原則に基づく保存への合意、 (2) 許容し得る範囲内での漁獲割り当て、 (3) 科学的助言の実施、 (4) 科学データの収集、 (5) 監視スキームの確立、及び (6) 紛争の平和的解決の促進である129。魚種保存条約は地域機構にかなりの権限を授権しているが、一方で同条約は未だアナーキーな国際情勢のもとでの条約であり、そのような世界では、個々の国家は署名していない条約についてはその履行義務を負うことはないのである。先の条約非加盟国船舶による漁獲についての条項は、そのような認識を踏まえてのものであろう。恐らく他国の検査官が立入検査を実施することとなろうが、違反者の処罰については、当該船舶の旗国に委ねなければならない130。この弱点、及び漁獲割り当てのための原則が不明確であるにも拘らず、魚種保存条約は漁業管理のために大きな意義を持つものと言える。それは、地域、或いは準地域機構という漁獲割り当てに係わる権限を有するメカニズムを創設したことにある。また、漁獲へのアクセスを「義務を有する」者に限定し、科学的根拠に依拠し、たとえ、旗国以外の国は違反船舶を処罰できないとしても、少なくともそれらを国際的な非難の攻撃にさらすことが可能になった。現時点は、過渡期であり、それで十分であるとも言える。

現存する幾つかの地域漁業機構は、国連海洋法条約の出現によりその役目を終えたとも考えられる。新たな機構が創設されており、それらの権限は旧来の機構よりも強大である。近年、北太平洋の「ドーナッツ・ホール」海域を閉塞するための新たな機構が創設された。それは魚種保存条約による突き上げによるものであり、同条約と類似の利点、欠点がある。この新たな機構の機能は、北太平洋において200マイル以遠の海域に発揮され131、「魚種の保存、管理、及び最適な活用」の枠組みに基礎を置いている132。この新たな機構は、北太平洋のドーナッツ・ホール海域における漁獲割り当てを行なうと共に、科学的調査を行なう委員会を有する133。この機構下での会議においては、漁獲割り当て(AHL: Allowable Harvest Level)を決定するが、これは既に他の幾つかの機構が有する権限である。その他に注目すべきは、どの国が漁獲を行なうかという点(INQ: Individual National Quotas)についても決定する権限を有し、これはその他の機構が殆ど持たない新たな権限であり134、これらの決定は、先述した科学的調査を行なう委員会の勧告に従い実施される135

 

 

 

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