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しかし、本条約は依然として個々の国家の自主的な法の履行に依拠しており、強制力という点では良い面と悪い面を併せ持っている。加えて、漁獲割り当てについては、適用可能な原則を確立したわけではない。

魚種保存条約は、公海での魚種に適用されるほか、「個々の国家の主権の及ぶ海域での魚種の保存及び管理についても適用される」こととしている121。しかし本規定は、「国連海洋法条約の沿岸国の権利及び義務に影響を与えるものではない」とされている122。代表団が条約の内容として受け入れたものは、魚種の遠い将来に亘る保存のための方策であった。この方策は、科学的な事実に基づき、決定は予防的な原則に基づくものとされた123。予防的な原則は些か危険な選択であると、しばしば耳にする論調も存在するが、そもそも魚種保存条約の予防的な原則の目的は、危険を逓減させることであり、それを撲滅することではない。ストラドリング魚種及び高度回遊性魚種の保存に責任を有する機関は、科学的検証に基礎を置いた考えを発展させることとされているが124、一方では、不充分な科学的データに基づいても行動する自由を有する125

これまでの漁場管理努力において、困難だった主要事項は、関連沿岸国とその他の国に対して、魚種の保存及び管理126に向け漁獲高の利害について協力させることであった。つまり、条約が述べている通り、両者が納得するために努力する義務を履行させることであった。適合性確保のための主要なメカニズムは、地域、或いは準地域機構である。国益が絡む場合、国の純然たる自主的行動は過去においてしばしば失敗の原因となったので、同条約はこれを排除している。つまり、同条約は、魚種へのアクセスを狭め、適切な地域や準地域の機構に属さない国について、全ての資源へのアクセスを排除した127。しかしながら、同条約は、署名国以外の国による法の遵守についても、同時に協力を要求する共に、更に、「そのような国の船舶によるストラドリング魚種、及び高度回遊性魚種の漁獲は、魚種保存条約の主旨に鑑み認められない」としている128

 

 

 

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