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2 漁業の管理

 

国連海洋法条約の条項は、果たして海洋の生物資源の次世代への保存について根本的な管理規則を定めているのであろうか。本質的に、本条約は沿岸海域の囲い込みと、将来の漁業資源の保存と海洋汚染防止に係る沿岸国の義務を定めている。それらの権限を有効に行使している沿岸国も存在しているが、そうでない国も同時に存在する。そして、国家による資源開発を制限しつつも、民間レベルでの開発を制限しない「ナショナル・コモン・プール」と特徴づけられる方式を作り上げたとは言い難い109。つまり、現存するのは世界の海洋に跨る「海域毎のシステム」である110

沿岸海域の管轄権の問題は、外洋に向かって開かれた、均整のとれた海岸線を有する沿岸国にとっては解決済みであるが、込み入った海岸線を有する沿岸国にとっては、次のような問題が残されている。 (1) 現行の資源開発が生態系を破壊しないような秩序をいかに作り上げるのか、 (2) 隣接する沿岸国の沿岸海域への(たび重なる)伝統的なアクセスの損失を巡る沿岸国同士の論争、及び (3) 複数の国のEEZ等、広大な海域に跨り回遊する魚種については、一国による魚種保存管理にはおのずと限界があり、それらをどのように扱うのか。端的に言って、このような新たな問題、即ち旧来の海洋法秩序ではあまり重要と見なされていなかった様々な問題が、新たに出現しているのである。それらを取扱うために、国連海洋法条約の漁業規則は、本条約が署名されてから数年経過しただけで補足の必要性が生じているのである。

 

 

 

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