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1 第11部(深海底関連)

 

国連海洋法条約最終案第11部に残されたNIEO秩序に反対の意志を表わした米国及びその他の先進国を納得させるための、グループ77による多くの譲歩にも拘らず、米国は本条約の署名を棄権し、また多くの重要な先進国も条約を留保している96。国連海洋法条約を支持する国は、怒りと困惑のうちに同条約を成立させ、米国を非難し、米国及びその友好国抜きでもやってゆけることを期待し、そのような国に対して条約の履行を強要した。しかし、結局はそうはならなかった。深海底資源へのアプローチのための新たな国際機構(ISA)の準備委員会が発足したが、彼らが何を行なおうとしても、米国及びその友好国を取り込もうとすると、それはNIEO秩序の重要な原則を犠牲にせざるを得なかったからである。第三次海洋法会議の最終局面において、米国は、自国の要求をまとめた「グリーン・ブック」という資料を提示した。その中で米国は、国連海洋法条約第11部の全面的書き換えを要求した。米国のこの提案は、ISA支持者により拒否されたが、ISA準備委員会は結局米国の要求に応じ、ISAの運用に係わる同条約の重要な部分を書き換えたのである97

米国の反対の理由は、一体何であったのか。一つには、米国が自国への侮辱を感じていたものと考えられる。米国のいかなる政権も、NIEOの原則により支配される国際機構の存在を容認しないのである。しかし米国は、国連海洋法条約第136条に規定される「人類共同の財産」という文言を削除することはできなかった98。たとえ面目を保つためとは言え、この文言が条約に残されたことは、米国が条約の署名を棄権した大きな理由である。その他に、米国及びその他の先進国が反対したことは何であったのか。一つには、国連海洋法条約第151条及び第153条に規定されている深海底資源の生産制度及び開発計画である。つまり、米国等の反対国は、たとえその計画がいかに効率良く運用されたとしても、投資に見合うだけの見かえりがないものに興味が沸かないのである。更に、ISAの意思決定方式である多数決制も反対の大きな理由であった。

 

 

 

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