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海底電線と海底パイプラインの敷設、海洋環境汚染、海洋科学調査、漁獲92又は海洋の境界画定93問題は、沿岸国が拘束力の有る決定を下す為の手続きを選択しない場合、紛争解決をその手続きに付託しなくても良いのである。これらの"忌避"条項にも拘らず、紛争解決の制度が用意されており、紛争当事国が紛争の解決を真に望む場合には、解決策を提供する為にその制度を利用することが可能である。

 

IV 改正事項

 

その時に最も良く起草された条約が、必ずしも最良の条約であるとは限らない。なぜならば、目まぐるしく変化する世界情勢下で永久に通用する枠組みを提示することは殆ど不可能であるからである。人類の要求は変化し、政治システムは変容し、データ及び情報は、人類が自然にいかに働きかければ良いかをその状況に応じて示すので、海洋の使用に係わる規範、規則、及び意思決定プロセスも絶えず変容するのである94。国連海洋法条約は、この変化に今のところは対応しているようである。沿岸海域の囲い込みは1976年に始まり、国連海洋法条約が署名されたときには、その中の多くの内容が既に慣習法化していると考えられた95。過去20年間に亘り、国連海洋法条約の主要条項で、重大な疑問を持たれたものは殆どない。

しかし、国連海洋法条約が確固としたものになるにつれて、そこにはまた、ギャップ、不正確性、及び、紛争解決の項でも検討したように、複数の国家を巻き込む問題を、協力して解決するに際して支障となる任意条項が散見されるのである。少なくとも、もしも国連海洋法条約が将来に亘り何らかの役割を果たし得るのであれば、問題のある条項及び節は改正されるべきである。このプロセスについては、以下に論述する。幾つかの問題、例えば深海底開発については、条約は大幅に改正されるべきであり、そうすることにより条約に係わる根本的な問題は解決されることとなろう。いつの日か、国連海洋法条約の規定は時代遅れとなろうが、その時には第四次海洋法会議が開催されるべきである。それについては、現在未だ十分な規範及び必要性が生じていないことから、この解説書においては扱わない。しかし、そのような日が必ず来るであろということには留意しておく必要がある。

 

 

 

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