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国連海洋法条約における汚染防止の手段は、今日の地球温暖化、オゾン・ホール、酸性雨、及びその他の潜在的な環境問題に対しては余りにも無力である。汚染に立ち向かう生態系についてはなにも考えられていない。汚染管理は、企業にとっての収益を上げるための活動となっている。環境の汚染防止は、沿岸国が沿岸海域において自国の利益を見出した場合にのみ注目され、そのような場合においても、沿岸国と、沿岸国による権利の任意な行使を阻止しようとするその他の利用国との間の攻めぎあいとなっている。

沿岸国が、海洋汚染防止の権利を行使する場面で最も多い局面は、自国領海及びEEZを通航する外国船舶による汚染である。沿岸国は、自国のEEZにおける汚染防止のために必要な法令を制定し71、その法令を執行することができる72。精緻な手続規定は、旗国、寄港国、沿岸国の間に協力を促すことに寄与した。もし旗国が、海洋環境の汚染を防止し、軽減し、規制するための国際的な規則と基準を執行する旨約束したならば、寄港国及び沿岸国はその意向に従うべきであろう。グロチュース学派の旗国主義には若干の修正が加えられたが、全く廃止されたというわけではない。寄港国と沿岸国の権限は以前より強化されたが、旗国は依然としてEEZ内を通過する自国船舶をコントロールする点で優越する権利を有するのである73。このことは、沿岸国に優先的権限を与えることを主唱する者を多いに失望させた。彼等は、環境汚染問題にたいする国連海洋法条約の取り組み方が、沿岸水域においてでさえ、余りにも生ぬるいと主張している。しかし、偶発的及び故意の油の流出事態に対し、IMCO(Intergovernmental Maritime Consultative Organization:政府間海事協議機関)、或いはその後継機構であるIMO(International Maritime Organization:国際海事機構)等により、取締のための努力が行なわれている74

 

 

 

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