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第三次海洋法会議の代表団は、環境保護のための努力も同様に行なった。国連海洋法条約第12部は、海洋環境を保護し及び保全することについて規定している。しかしながら、そこに記されている義務は海洋環境の保護のための警告であり、それは「自国の管轄、又は管理の下における活動が、他の国及び周辺の沿岸の環境に対し汚染による損害を生じさせないようにおこなわれるために必要な措置をとる62」、「損害、若しくは危険を一の区域から他の区域へ直接、若しくは間接に移転させないように行動する」63、「海洋環境に有害な異変をもたらす技術の利用、又は外来種或いは新種の導入を防止する」64と言うものである。しかし、そのために具体的にいかなる方策を講じるべきであるかということについては同条約は沈黙しており、禁止される具体的な行動についても不明である。更に、達成すべき目標及び規範についても同様に不明である。例えば、義務の遂行、汚染の減少の程度についての目標値、被害国に対する損害賠償についてはいかなる規定も設けられていない。これらは、生態系を管理する上で、多分欠点もあり、極めて困難な概念ではあるが、汚染問題に熱心な海洋会議代表団によって適切な概念に展開させる試みでもある。

国連海洋法条約では、いずれの国も、世界的規模或いは地域的規模において、直接又は権限のある国際機関を通じ、地域的特性を考慮した上で、海洋環境を保護及び保全するため、国際的な規則及び基準、並びに勧告される方式、手続きを作成するために協力することとしている65。いずれの国も、科学的調査のために協力し66、緊急時における計画を促進し67、損害の危機が差し迫った場合、又は損害が実際に生じた場合には通報し68、汚染を監視し69、海洋環境の保護のためのプログラムを推進する70。繰り返しになるが、このためのガイドライン、規範及び目標は、条約上は何も規定されていない上に、もしもこれらの義務に違反した国があっても、それに対する罰則規定も存在しない。海洋汚染管理も同様に追加交渉が必要なのであり、既に交渉が開始されている領域もある。特に、残存性有機科学物質による汚染の防止については、既に解決のための努力が開始されている。

 

 

 

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