日本財団 図書館


4 人類共同の財産

 

国連海洋法条約は、賛成130、反対4、棄権17により採択され、これにより深海底における非生物資源の自由な開発は恐らく終りを迎え、如何なる国の管轄権も及ばないものと考えられる。つまり、「早い者勝ち」の時代は終わったのである。いずれの国も、深海底、又はその資源のいかなる部分についても主権的権利を行使してはならない75。条約の他の部分ではグロチウス的な考え方は未だ残っているにしても、他国の権利を侵害しない限り、深海底における資源の開発を自由に行なうことは最早不可能となったのである。

深海底資源に係わる新たな枠組みの重要部分は、「人類共同の財産」と言う概念である。この概念に関する明確な定義は条約上ではなされていないが76、それは、旧来からの20世紀の重商主義的アプローチを、新経済秩序により書き改めた情緒的表現とも見受けられる。資源は全世界の人類に属し、人類によって共用されるべきものであり、或る特定の国のみに独占されるべきものではない。それは、分割又は割り当てを受けるものではなく、「開発途上国、及び完全な独立を達成していない国に対して、深海底における活動から得られる金銭的利益及びその他の経済的利益の衡平な配分」がなされなければならない77

人類共同の財産という概念のもと、深海底資源へのアクセスは、人類、或いはその正当な代理人であるISAのみに独占されることとなった。この結果、権利を有する者の身分を明確にすることとなった。深海底の活動に関しては、国連海洋法条約は、当該活動により生ずる有害な影響から海洋環境を効果的に保護するため、必要な措置を取らなければならないことを規定すると共に78、深海底における活動が国連海洋法条約に適合していることを確保する義務79及び生産政策について規定している80。また、紛争解決についても規定が詳述されている81

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION