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グロチウス学派は、枯渇の恐れのある資源の共同の使用についての規則を確立することはできなかったが、彼らの理論は人類が海洋を使用する上で最も安価な考えであることは確かである。深海底資源開発に係わる権利を拡張することは、これまで決して経済的であるとは言えなかった。しかし、一国の資源を巡る権利を守るとことは、その他のいかなる特権にも優るものである。公海にアクセスする権利を制限するための合理的な理由は見当たらず、特に航行の自由という点に関してはそのように言えよう。国際的機関により海洋を管理するという新たな立場、即ちいわゆる海洋囲い込み主義からの反論においても、本件については積極的な反対意見は見られない。アナーキーな国際政治システムにおいては、殆どの国は空域、或いは公海へのアクセスを制限する超国家的な国際機関の存在を容認しないのである。

グロチウス学派の論理は、その法的効果を、自助救済の考え方に依存している。国家による行為が紛争に結びつく可能性が低い場合には、自力救済が、効率的な原則として、海洋の使用権の基礎になる。それ故に、条約の締約国は、船舶に対する国籍付与の権利を有するべきである43。それゆえに、いずれの国も、船舶登録簿を保管するというような、重要ではあるが、限定的な義務を有し44、海上において生命の危険に晒されている人や船舶には援助を与えなければならないほか45、奴隷運搬の処罰を行ない46、海賊行為の抑制のための協力義務を有するとともに47、麻薬又は向精神薬の不正取引48、及び公海からの無許可放送の防止のために協力しなければならない49。更に、いかなる国も海底電線、及び海底パイプラインを敷設する権利を有し50、内水、群島水域、領海、又は接続水域からの継続追跡権を有する51

 

 

 

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