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公海においては、いかなる国も漁獲の権利を有することから52、また問題が生じた。全ての国は、公海における生物資源の保存のために必要とされる措置を自国民についてとる義務、及びその措置をとるに当たって他の国と協力する義務を有する53。しかし、協力というのは、個々の国家に対して、自国の漁業従事者に他国との協力を行なわせるための原則としてはなお弱いのである。

 

沿岸海域への自由なアクセスが禁止されたことと比較して、公海上へのアクセスが開放されていることに係わる全ての問題は、依然取り残されたままとなっている。いずれの国も、公海における生物資源の漁獲予定量を決定し、他の保存措置を行うにあたり、入手することのできる科学的情報、漁獲量、及び漁獲目標量に関する統計、その他魚類の保存に関するデータを、権限のある国際機関を通じて、適時定期的に交換しなければならない54。これはいわば伝統的なアプローチであり、誰が漁獲量を決定するのかという問題は解決されていない。追加的交渉では、特にストラドリング魚種(訳注:EEZとEEZに接続する公海水域にまたがって(straddle)存在する魚種)、或いは、EEZにより囲まれた、いわゆるドーナッツ・ホール状の公海水域について、公海へのアクセスの自由に係わる問題を敢えて取り上げることを回避したため、未だに解決を見ていない。

国連海洋法条約は、多くの遠洋漁業の形態を変化させ、同条約が発効するまでに解決を見ていない新たな多くの問題を引き起こした。EEZの設置により生じた顕著な問題の一つは、EEZからの遠洋漁船団の締め出しである。沿岸国は、単純に自国の漁獲割り当ての決定に関する権限を利用しているだけである。もしも漁獲量に余剰が生じたならば、沿岸国はそれを他国にリースすることも可能である。

EEZから締め出されたことにより、多くの遠洋漁船団は、スクラップにされる代わりに新たな漁場を求めて公海へと向かったのである。遠洋漁船団の中には、200マイルEEZのすぐ外側の公海と接する水域での漁獲を行なっているもののほか、北半球においては、米国とロシアのEEZに囲まれたドーナッツ・ホール海域において、主として鱈のような、かつてEEZの内側において漁獲された魚種を狙っているものも存在する。主として日本、韓国及び台湾の遠洋漁業船団は、30〜40マイルの長さに及ぶ流し網を設定するが、それは、上辺は例えばイカのような世界的にはあまり活用されていない魚種を狙っているように見える。

 

 

 

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