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国連海洋法条約は、沿岸国があまり身勝手に振る舞わないように手続きを規定している。恐らく、沿岸国は、大陸棚問題専門家委員会に境界画定計画を提出し、当該委員会はそれを検討して勧告を出すであろう42。しかし、必ずしも、その規定の通りには紛争が処理されない。その原因は、当該委員会は如何なる拘束力も有するものではなく、また、国連海洋法が発効するまで委員会の創設は出来ない。更に、沿岸国は国連海洋法条約が発効した後10年間の猶予期間を持っており、その間に、境界画定のための科学的諸元を当該委員会に提出しなければならない。この解説書を執筆中の現時点で、計画書提出期限まであと8年残されている。意に添わない境界画定計画であっても、猶予期限までに異議申立てを受けない場合は、沿岸国が推し進めてきた境界画定計画は、その期間を超えた後は、国際慣習法の下での法的正当性を有するものと判断される可能性があるのである。

 

3 公 海

 

第三次国連海洋法会議は、公海の自由使用の原則については従前同様にグロチウスの理論(訳注:自然法学説)によるとの取り決めが再確認された。自国の船舶及び航空機が公海上に位置する場合は、公海へのアクセスと使用に係わる規定は、基本的に、数世紀に亘り続いたと同様の状態で据え置かれた。公海は何人に対しても開放されているものであり、他国の主権を侵害しない限り、最小限の制約で公海を利用できるものである。同条約で装いを新たにされた、多くの伝統的な海洋の使用に係る権利及び義務は、以前に比べて明確に規定され、また権利と義務の行使の結果が予見し易くなった。しかしながら、公海の共同使用権と生物資源の保存を脅かす場合であっても、同条約はその救済策を提示していない。

グロチウスの理論が第三次海洋法会議で生き残ったのは、主として次の二つの理由による。第一に、グロチウスの理論は、未だに有効であるということ、そして第二に、公海の使用は、殆どの代表団にとって沿岸海域の使用に比べて目立った論点ではなく、沿岸から遠く離れた海域を巡る議論に多くの労力を費やしたがらなかったのである。

 

 

 

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