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海洋における領域の拡大は、次の10年間で資源開発者がそこで新たな資源を発見した場合にのみ値打ちのあるものとなるのである。もしもそうなれば、国連海洋法条約の領域画定の条項は、新たに海底資源開発ラッシュを呼び起こすに違いない。

交渉の初期段階において領域拡大について強い反対が見られた後、主要な海洋使用国は200マイルのEEZ、12マイルの領海、及び国際海峡における通過通行権の一連のパッケージに賛同した。しかしそのような国の大部分は、その見かえりとして一種の敵討ちを行なった。米国及び英国を含む多数の国は長大な海岸線を有していることから、それらは沿岸国の管轄権が拡大することにより利益を受けることとなる。結果として、しばしば縁辺主義者(Margineers)と呼ばれる国は、沿岸国の領海を超え、その領土の自然の延長を辿り、大陸縁辺部の外延まで延びている海面下の区域の海域を大陸棚とする原則を推進するために、協力したのであった。

縁辺主義者は、画定のために多様な判断基準を有する「アイルランド方式」と呼ばれる議論を展開した41。その方式によれば、沿岸国は大陸棚縁辺部を200マイル以遠に拡張することが可能となる上に、沿岸国は同時に縁辺部の境界直線基線を60マイルにまで延長できる。また沿岸国は水沈している岩礁が少なくとも大陸斜面の海底の外側へ1パーセント以上、或いは60マイル以上外洋に向かって伸張していれば、沿岸国はその領域権を主張できる。もしもそれがもたらす結果を沿岸国が満足出来なければ、沿岸国はその外側の海底境界線を2500メートル等深線の外側100マイルに設定するか、或いは沿岸から350マイルに設定することを試みることとなる。しかし、深海底の海台、コンチネンタル・ライズ、海底山頂、海溝、或いは潜岬等の、いずれが大陸棚縁辺部の画定にとって適切であるかについては疑問がある。

手短に言えば、これは、メニュー方式である。紛争解決の手続きについての選択肢を網羅的に列挙しておき、紛争当事国たる沿岸国は、その中から手続きを選択するのである。しかし、沿岸国に選択の自由を与えると同時に混乱を与え、更に沿岸国に、多分領域拡張欲を生じさせるものである。

 

 

 

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