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EEZの境界の画定は、同様に曖昧な論点である。新しい海洋法の枠組みは、領域性ということに基礎を置いているが、条約中の、沿岸国の領域の終了する地点から他国の領域に入るという規定、或いはEEZが国際的に重要な海域と重複するという規定は、交渉過程においても困難な問題であった。この種の問題を将来の課題として残すこと、或いは詳細な規定を設けること(例えば、第7部の大陸棚に関する規定)は、いずれ新たな紛争を引き起こすことになりかねない。全ての海岸線は長く、海図への記載が容易というわけでは必ずしもない。それらの多くは複雑に入り組み、島嶼に囲まれ、EEZを決定するための直線基線の設定が困難である。EEZを巡り国家間で紛争が生起した場合には、衡平の原則に従い解決することとされている39。互いに向かい合っているか、又は隣接している海岸を有する国との間におけるEEZの境界線の画定は、国際法に基づく合意により行なわれる40。特定の境界の画定には、明らかに、対立する利害を有する当事国間の交渉を必要とするが、もしも第三次国連海洋法会議が、その当事国の詳細に亘る約束履行交渉に基づき首尾一貫した原則と規範を規定することができれば、それは問題の解決の一助となり得たかもしれない。しかし、実際には、それらの原則や規範は明示されることはなかったのである。

 

2 大陸棚

 

互いに向かい合っているか、又は隣接している海岸を有する国との距離が400マイル以内である場合には、そこにEEZの設定を試みることは条約上適切とは言えない。何故ならば、それは衡平の原則に反することとなり、条約の起草者は、巧妙にもこのような特異な事例についての規定を設けなかった。結局のところ国連海洋法条約の適用が可能であるとの原則に基づき、大陸棚の境界を策定しようとした試みは悪い結果をもたらすこととなった。もしも現実に沿岸国が、「領土の自然延長」の原則を悪用して領域の拡張化を試みたならば、国連海洋法条約の大陸棚についての規定は、海洋囲い込みの地理的な合意を変更しかねないワイルド・カードであると言える。現在のところ、このような動きが始まる気配はないが、もしもそのような動きが始まれば、それは第四次海洋法会議への引き金となろう。

 

 

 

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