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第四のモジュールは、同条約第11部に記されている深海底、即ち世界の海洋のうちの64パーセントを占める海底に関するものであり、少なくとも理論的には、グロチウスの理論に則り将来の利用者に供すべく開放されている。第三次海洋法会議の最終局面で協議されたように、深海底鉱物資源開発のための新たな枠組みは、決してグロチウスの論理によるものではない。深海底非生物資源開発の権利は、民主的に選出された代表を有するISAのような国際機構を通じて行なわれるものである。特にグループ77のような者が、自分達のやり方を押し通そうとすると、他の国及び民間団体は排除され、国際的エンタープライズが利益を独占することとなる。

 

最後の第五のモジュールは、同条約第15部及び附属書VからVIIIにかけて記されている紛争の平和的解決に係わるものである。紛争に際して、当事者が調停に向けて努力することを要請されており、海洋法裁判所、或いは国際司法裁判所による仲裁又は法的解決が図られることとされている。主として交渉上の理由により、本件に係わる幾つかの条約規定は曖昧な表現とされ、解釈から生じる対立は、当然生起する余地がある。これは、代表団が故意に曖昧な起案をしたものであり、問題の解決を将来の海洋法を巡る裁判所の判断に先送りしたとも言える。その結果として、事実海洋の枠組みは複雑、かつ解釈困難なものとなっている18。恐らく将来の法学者は、海洋法及び海洋管理についての理論的な解答を迫られるものと思われる。第三次海洋法会議の代表団には、理論的な問題を担当する者が含まれていなかったし、実効性があり、かつ条約の全体に即した理論を構築できる者も今までのところは居ない。

 

 

 

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