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国連海洋法条約は、五つの「モジュール」から形成されている。第一のモジュールは、沿岸国の基線から200マイルまでの排他的経済水域(Exclusive Economic Zone:以下EEZという)についてである。EEZは沿岸国の資源についての排他的な権利と、その他の者の航行の自由とが混在した海域である。機能的に異なる二つの権利、つまり、沿岸国の資源利用の権利と、航海自由の権利が同一海域に混在することは、一種独特なものである。またそれは、主として少数の南米諸国が、法理論上の説明のために努力したにも拘らず、理論的には十分成熟したものであるとはいい難い。従って、EEZについて完全な合意が成立しているとは言えないのである16。例えば、EEZにおいて、沿岸国の漁業権と外国の海底ケーブルの敷設権とが競合した場合には、いずれの権利が優先するのか。この種の問題は、海洋のおよそ36パーセントを占めるEEZで発生する恐れがある。

 

第二のモジュールは、海洋の約64パーセントを占める、いかなる国の管轄権にも属さない公海、及びその上空の領域についてである。公海においては、グロチウス学派の航海の自由、及び旗国主義の概念が依然として優勢である。公海を利用する全ての者は、自由に利用する権利、いわゆる「早いもの勝ち」のルールにより開発を行なう自由、及び公海上に位置する自国民等に対する管轄権を有する。グロチウス学派の公海の自由という主義は、国連海洋法条約第7部に記されているが、それぞれの国家がその自由をどのように行使するのかについての技術的な指針は示していない。

 

第三のモジュールは、国連海洋法条約第6部(大陸棚)に記されているいわば中間の海域であり、これはEEZと公海部分との間に位置する海域である17。この海域においては、大陸棚が大陸縁辺部にまで伸張しており、明確な境界線は確立していない。しかし、高度に弾力性のある特定化がなされている。この第三のモジュールには、沿岸国が海洋の36パーセントを占める海域において管轄権を行使できるのか、或いは非沿岸国、及び国際海底機構(International Seabed Agency:以下ISAという)が割り当て、或いは開発を実行する余地が残されているかということに関わる規則を内包している。

 

 

 

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