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私は、国連海洋法条約は、明らかに20世紀における海洋政策の動き、つまり「囲い込み」の動きを活発化させた、と考えるし、良くも悪くも将来の枠組みを形成する諸施策に、その枠組みの変化を勘案しなければならなくなったと断言するものである。それ故に、国連海洋法条約が、果して「良い」か否か、或いは「実効的」に充実した枠組みであるか否かは、第二義的な問題である。4むしろ重要な問題は、地球上の7割を占める海洋を管理するためのルールとして如何なる影響を与えたかにある。海洋環境の管理のためには、より良い原則があり得るという議論も存在しよう。熱狂的な理想主義者は、再度初めからやり直して、海洋を法的に手のつけられていない状態に残しておくような「包括的管理」のための体制の確立を推進するかもしれない。しかし、例え「包括的管理」の推進者が、アジェンダ21で見られるように、沿岸海域の囲い込みのために尽力しなければならなかったとしても、国連の行動の結論はリオデジャネイロ地球会議の結果に示されているようなものである5

 

この解説書においては、国連海洋法条約が何を達成したか、及びその規則が今日の海洋管理の努力にいかに貢献し得るかということを検証する。国連海洋法条約は、包括的な規則にも拘らず、多くの条約と同様に言わば骨格的な、或いは「枠組み」的な文書であり、現実に行なわれている国際的な海洋環境に関する大方の動向は、少なくとも主要な事例から観れば、国連海洋法条約を修正する方向である。ここでは、この点を主要論点とするが、初めに国連海洋法条約が示した法体制の意義を検証することとする。

 

 

 

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