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II 国連海洋法条約の法的意義

 

国連海洋法条約は、明快な法的枠組みとして意図されたものであり、またそのように承知しておくべきである。発効以来、署名国、及び国際慣習法の下にある非署名国の両者は、定められた規則及び公式文書によって負うべき規範に拘束される義務があると言える6

第三次海洋法会議の目的は、新たな海洋の枠組みの形成であったが、交渉の参加者は、会議が国際秩序に基づき新たな枠組みを形成する場であるということには合意していなかった。発展途上国の代表者の集まりであるグループ77(訳注:米国或いは西欧諸国等の先進国に対する開発途上国、或いは新興諸国の集まり。これらの国は第三次海洋法会議において、17世紀以来の「狭い領海」と「広い公海」の二分構成に立つ伝統的な海洋法を全面的に改め、海洋の管理及び支配と利用の国際的な再配分を要求した)は、深海底鉱物資源についての枠組み(国連海洋法条約第11部)に、新経済秩序(New International Economic Order、以下NIEOという)を導入しようとした。グループ77は、実際の国際経済活動において何れか一つの分野で新国際経済秩序枠の押し付けに成功すれば、それを先例にして、規制の少ない現行の国際経済秩序に対して更なる非難を加えようと目論んでいた7。しかし、グループ77は、部分的には目論みの実現に成功したが、全般としては失敗して、そのまま、今日の経済秩序が続いている。第三次海洋法会議の長い交渉期間を通じて、NIEOの原則は新たな国際秩序の形成を意図し、その結果は国連海洋法条約第11部に現れており、それは起草された時点に想定された意味を殆ど残していない8。実際に同条約第11部は、深海底鉱物資源への市場からのアプローチを反映して殆ど書き改められた。リベラルな経済秩序が、良くも悪しくも勝ったのである。

 

 

 

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