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4. ホリスティックな自然史学

しかしながら、残念なことに一度分断された自然史型の思考は、一つひとつの要素科学分野を寄集めたところで元に戻せるものではない。現段階では、むしろナチュラリヒストリーというまとまりを初心に戻って一つの体系と再認識し、エスタブリッシュの各分野間バリアを払拭した、ホリスティックなシステム科学と捉えるのが至当と見るべきであろう。

 

5. 究極の博物館的自然史学習の在り方

以上のような時代的・文化的背景を考えると、自然史システム科学は一方では博物館でのハンズ・オン型体験からの自然理解に始まり、他方では大学・研究機関における理論化・体系化の結果が期待され、それらが国の明確な指針と社会全般での情報整理過程とにリンクしながら、一連の循環型ダイナミクスの形態をとることが必要である。自然の存在や仕組みを素直に受け止める姿勢とホリスティックな思考・把握のためには、リベラルアーツ・センスのアカデミズムとがバランスしなければなるまい。なお、ハンズ・オン学習は、言う迄もなく必然的にユニバーサル手法であり、バリアフリー効果にも威力を発揮するから、開かれた博物館の趣旨のみならず、館外での学習活動の基本を満足させるものとなる。その結果、野外での実体験を軸とする「拡張されたハンズ・オン活動」が、自然史系博物館の研究的かつ本質的な生涯学習のメディアとしての支援活動特性を発揮することになるのである。

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