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根本的な問題として、行政側にあってさえ海岸保全問題を超領域型の複合課題として捉える視座にほとんど欠けており、長らく縦割り施策に甘んじてきたという経緯が指摘されねばならない。一方、周辺の関係住民のみならず、市民レベルでの海岸についての関心もまた極めて薄く、地域の自然保護や、動・植物の保全問題程度までにしか対応ができないことも大問題といわねばなるまい。

そうした事態での海岸保全の問題整理には、できるだけ具体的な事例の拾い上げと共に、マルチディシプリナリーな物の捉え方や、前述のような複数条件の場のインターフェイスであることの特色を示すことが重要であると認識できる。したがって「海岸保全」グローブは、今回作成した形を一つのプロトタイプとしながら、いくつかの衛星グローブや関連グローブを配して、さらに大きな観点から眺め、結果的には「海洋環境科学」グローブのいくつかの衛星群としてみられるような分野配置構造を目指すことが望ましい。

当然のことながら、前出のような海洋教育にまつわる課題は、とりわけ日本では重大事であるし、海岸景観の位置付けでは、イギリスでの海岸域のトラスト運動などをも参考にした動きが可能かどうかの問題も忘れることができない。

自然要件に関してみるならば、「仔育て帯」としての海岸の保全生態学の領域が充実されねばならないことは言うまでもなく、魚付林―磯焼け問題に代表されるような、沿岸漁業との関連も無視できぬ事柄であり、これは、ひいては日本の海産物産業の行方をも律することになるのであり、活発な研究進展と各方面の意識の向上が待たれねばなるまい。

その意味で、「水産学における空白領域」シンポジウムのように、既存分野の整理学から不十分性か高い分野の指摘や必要な新分野の開拓の必要性がみえてくる立体目次型発想でのとり組みは、研究・教育上極めて有意義であると言える。

なお、「海岸保全」グローブ作成に当たっては、象限のとり方に他と違った観点をおき、下記のような三つの要素を組み合わせるという配慮で分野・項目をレイアウトしている。すなわち、人為改善の有無、利用目的と利用以外の目的、防護・人命・財産かそれ以外への優先である。象限を対極的に指定することにより、視覚的にもわかり易い分野・項目分布パターンを表現できるように工夫したものである。

 

 

 

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