日本財団 図書館


一般性の強いプログラムだけでは、具体的な思考活動を現地に即して育てることは不可能であろう。

2] 海洋を総合的に捉える視点を養成するため、海洋学研究機関での学習は分野で縦割りにせず、横断的な教育が受講可能なシステムにする。日本の大学では、特に大学院では専門分化を勧めており、総合的な視点を養うには学部教育しかない。しかし、海洋学を横断的に教える学部教育機関は東海大学にしか存在していない。

なお、本研究にあたっては、寺崎誠教授(東京大学海洋研究所)および濱田隆士教授(放送大学)の貴重なるご指導、ご助言を得た。赤見朋晃氏(東京大学教養学部広域科学科)・和田理恵氏(東京大学大学院総合文化研究科広域システム科学科)の多大なるご協力を得た。ここに記して感謝申し上げる。

 

c 海岸保全

 

海岸保全に関わる現代的課題

 

日本の海洋研究にあって、海岸保全にまつわる諸問題は深刻である。環境変遷、構造物による環境変化、漁港で典型的にみられる人間生活における経済活動とのからみ、沿岸漁業の変動とその実態把握、河川・保全林を含めて災害との関連等々、重大アイテムが目白押しである。

分野や事例項目をくくる領域の観点からすれば、陸上生態系と海洋生態系とのインターフェイスにあって、しかも人間活動との接点を切り離せないものばかりである。したがってグローブ作成にもいくつもの立場が平行して成り立つわけで、バランスのとれた最終的なパターン整理までにはかなりの手間が要る。

海岸侵食や砂移動という局面一つをとってもその錯綜した相互関係を解明することになかなか研究と対策が追いつかないのが実情である。理念的には、“渚”の重要性は、わが国のみならず海外においてもかなり良く認識されてきたのであるが、人の生活のあり方に加えて様々な法的制約があって、理想的な海岸保全の姿を描くには時間が要る。

この間、タイミングとしては新河川法、新森林法、新海洋法の出現もあって、旧来の工法の見直しや住民意志のとり込みなど期待される面も大きくなってはいるが、まとまりのある有効な保全策の確立には程遠いと言わざるを得ないのである。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION