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b 海洋教育の実態

地球理解の大きな柱であるべき海洋科学の発展を期すためには、一般社会の広い関心に支えられる海洋関連の政治的経済的措置が必須である。さらに、優秀な海洋科学の専門家・研究者が育つための、高等教育機関の充実が不可欠であることは言うまでもない。

旧来のわが国における海洋教育システムは極めて不十分であるとしばしば指摘されてきたところであるが、そうした事態への対応としての具体的かつ総論的なスコープの解析や提案がないのもまた厳しい現実である。

本項においては、超領域的科学としての特性を分野生理学の視点で捉える一環に海洋教育という局面をおき、斯界の新たな展開に資することを目的として国内外の大学や研究機関における海洋科学教育カリキュラムをとり上げて、試行的考察を加えるものである。

 

ア 国内例

 

分野整理・立体目次の視点からみる日本の海洋教育の実態

 

I. 調査研究の目的

海洋研究や、維持管理・利用・開発に関する人材の養成を目的とした教育においては、海洋に関する広い分野がカバーされている必要がある。現在、わが国をめぐる海岸や海洋では、環境問題や多様な価値観に応じた計画作成などが求められており、総合的視野や知識をもった人材が求められている。日本の海洋教育では、工学・自然科学系が中心で、理科系偏重の傾向がある。しかし、現実社会では、人文社会学系の諸科学、法律経済学も含めた文科系、さらに芸術系の考え方が必要とされている。また学問分野として一部の分野に偏りがあるのは本来的ではない。

海洋教育のあり方が検討される際、現行のプログラムの正確な状況が把握されている必要がある。例えば、正規の学部・学科の創設や既存の組織の改革などの場合である。さらに、社会人としてこれらの教育を受けた人材の発展性の模索も急務となっている。

本研究では、日本の大学教育のカリキュラム調査より、まずは海洋教育科目を整理する手法として立体目次を構築し、それにより分野分布を調べ、理想的な海洋教育には具体的にどの部分の空白が埋められるべきであるか等の検討を試みた。

 

 

 

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