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海洋環境としては海岸、潟、湾、大陸棚、深海等いろいろあるが、これらに堆積する堆積物も、原則的にはそこでの海水の流れの力により決まってくる。砂浜海岸に堆積する砂は、寄せては返す往復運動する波の力により運搬、堆積するし、細かく見れば沿岸流、離岸流により堆積物も微妙に異なってくる。一般には海岸の堆積物はよく粒度が揃って淘汰がよいのが特徴なので、さわっただけで海の砂と川の砂の違いはわかる。川の砂は一方向の流れであることと、流れの強さが一定ではないため、粘土質、シルト質の細粒部分から細礫部分までをも含む淘汰の悪い砂となっている。

海岸部においても波の力が強いところは礫が堆積する。これも川の礫とは異なり、扁平になる特徴がある。礫の形を見れば、そこがかつて海だったか川だったかがわかる。水深が深くなればだんだんと細かい堆積物になっていくので、湾央では一般に泥質堆積物となり、大陸棚ではシルト、粘土となる。ただ、大陸棚及びその斜面では、陸上の洪水時の影響や、海底地すべりをきっかけとする乱泥流の発生などにより、かなり深い部分にも砂質堆積物が存在する。よく見られる砂泥互層などはこのような堆積物だと言われている。

特殊な堆積物による古環境の推定も行なわれている。コキナと言われているサンゴや貝化石の破片のみの堆積物からは、サンゴが生育する暖かい海の環境が推定できるし、亜炭層や泥炭層があれば湿地帯としての環境が推定できる。

ある一定の粒子から成る堆積物が「すじ状」に入るのをラミナと呼んでいる。このラミナの入り方により水流方向がわかるとともに、この地層は浅い堆積盆地の正常な水流により生成されたと推定できる。また、火山灰堆積物(凝灰岩)があれば、当時の火山活動の様子が推定できるし、熱水による変質作用が見られればこれも火山活動の一環を示すものとなる。この他、断層があれば当時の地震活動を示すことになろうし、氷河地形があれば当時の気候を示すことになる。いずれにしても古環境推定はいろいろなデータを集めて総合的に判断しなければならないので、正しく複雑系の学問であると言える。

 

3. 変わる現在の海洋環境

古環境を推定するのに、現在の海洋環境の研究成果を利用するのだが、その現在の海洋環境が少しずつ変わりだしている。これは自然の営力の変化により変わったものではなく、人間の生活変化や各種の開発行為の結果もたらされたものである。

例えば、大、中河川には大きなダム、小さな枝沢にも多くの砂防ダムが建設されてきた。この影響により、堆積物が海洋にまで到達しなくなっている。海洋での堆積物の減少により今までの安定していた環境がくずれ、海岸が侵食されたり、堆積物が変化したりしている所が見られる。

 

 

 

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