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これだけでも、大陸と海洋で地殻の性質が異なることが示唆される。海水に覆われているが、大陸地殻の性質を示す部分を大陸棚という。また、岩石圏に注目したときの大陸と海洋の境界が大陸斜面である。この結果、岩石圏に注目したときの海洋は、海抜で-2000m以深となり、一般に深海底と呼ばれる。以上のことから明らかなように、海洋における資源を議論するときは、海洋を大きく水圏の海水と、岩石圏の大陸棚および深海底に分けておく必要がある。

水圏における最も重要な資源は、食糧としての海産物である。これらの分布は一般に水深および水温に規制されている。このうち、水深に関しては、一般に深くなるほど資源量が減少する。これは、海棲生物のほとんどが、直接ないし間接に太陽エネルギーに依存して生息していることによる。しかし、深海底には、地殻から噴出する熱水のエネルギーに依存して生息しているシロウリガイ等の生物もいる。水温分布と魚群との関係は極めて複雑である。これに関しては、為石(1997)の興味深い総説があるので、詳細はそれに譲って、ここでは省略する。

海水から得られる鉱物資源として、水そのものと、そこに溶存している塩類がある。水そのものの利用は、基本的に冷却水に限られる。日本の工業地帯が沿岸部に立地している理由として、1]建設用資材の搬入が容易なことと、2]原材料を海外に依存していることに加えて、3]容易に工業用水が得られることが挙げられる。溶存塩類で最も利用されているのは、NaCl(鉱物名は岩塩)である。食卓塩として利用されるほか、各種化学工業の原料となる。他の溶存成分の利用としては、例えば、マグネシウムを、

Mg2+Ca(OH)2→Mg(OH)2↓+Ca2+

なる反応によって沈殿させ、耐火材の原料としている。前者は蒸発岩鉱床から得られる岩塩と、後者は天然のマグネサイト(MgCO3)あるいはドロマイト(CaMg(CO3)2)と競合関係にある。核燃料資源としてのウランを海水から回収しようという研究が一時期行われた。しかし、高品位のウラン鉱床が発見されるに及んで、このプロジェクトは実用化の目途が立つ前に終息した。

以上のように、海水から得られる鉱物資源の種類と量は、海水の量に比して、極端に限られている。これは、河口付近を除いて海水が極めて均質なことに起因する。すなわち、海水中にはいかなる鉱床も存在しない。

岩石圏のうち、大陸棚の鉱物資源の賦存位置は、海底面と海底下に分けられる。海底面には、陸上の地表と同じく、砂鉱床が存在する。マレイ半島沖の砂錫鉱床が最もよく調べられ、開発されている。南アフリカ・西アフリカ沖、あるいはオーストラリア西岸沖などでは、砂ダイアモンド鉱床の存在が知られている。

 

 

 

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