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2-3 総合的海洋科学の視座

 

2-3-1 資源論的海洋科学

人類を含めて生物は、気圏、水圏、岩石圏の境界部付近に生息している。これら3圏のうち、気圏の下底を通常地球表面という。この地球表面において、70%以上は水圏が占め、海(あるいは海洋)と呼ばれる。残りの30%弱が陸(あるいは大陸)である。人類は、このうち陸域に住む陸生動物である。しかし、人類は海洋から多くの恩恵を受けている。その代表は、食糧資源としての魚介類である。また、海洋は食塩(鉱物学的名称は岩塩)などの鉱物資源の供給源でもある。さらに、現在陸域に存在する鉱物資源の多くが、過去の地質時代において、海洋で形成された。このように資源の立場だけから見ても、海洋は人類生活にとって、不可欠の存在である。以下では、このことを多少の例を引きながら、少し詳しく解説する。

資源の消費と世界人口とは密接に関係している。そこで、本論に入る前に、紀元前1万年から現在までの人口の推移を概観する。人口の年増加率にもとづくと、この間は、紀元前5千年以前、紀元前5千年から紀元1670年、1670年から1930年、1930年から現在までの4期に分けることができる(正路、1998)。第1期の紀元前5千年以前の世界人口は400万人から500万人とほぼ一定である、第2期の紀元前5千年から紀元1670年までは年率0.071%で世界人口が増加した。さらに、第3期の1670年から1930年の人口の年平均増加率は0.79%、第4期のそれは1.85%である。これら人口増加率にもとづいて区分された第1期と第2期の境は、農耕の普及あるいは家畜力の利用の普及時期に対応する。次の第2期と第3期の境(すなわち1650年から1700年)は、燃料として石炭の利用が一般化していく時期に、また最後の第3期と第4期の境(すなわち1930年から1940年)は、石油の利用が一般的化していく時期に対応している。

世界におけるエネルギー消費量増加の最大の原因は人口増加である。しかし、個人1人当たりのエネルギー消費量も生活の向上とともに増加する。世界的規模で見た場合、各国の国民総生産(GNP:Gross National Product)とエネルギー消費量の間には相関関係が存在する。例えば、1994年における世界各国の国民1人当たりGNP(P:US$/y・capita)と石油換算エネルギー消費量(E:kg-oil/y・capita)は、

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の間にはいる(正路、1998)。

 

 

 

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