日本財団 図書館


(3) 都市型地域社会と漁港:神奈川県鎌倉市腰越漁港改修計画

世界的文化都市として名高い鎌倉市。寺社仏閣などの文化施設や緑を守る市民の運動が盛んで、文化財保護法発祥の地である。また、太陽族に始まり、サザンオールスターズの歌詞の題材となるなど、日本の若者の海洋性文化の中心地でもある。その地での漁港拡幅および周辺整備計画を巡って、様々な議論が戦わされている。計画の一時停止があったが、最近、計画を再考する委員会が結成され、公募による市民参加の委員6名も加わった議論が行われている。文化的観光地、海洋性観光地、文化都市、大都市郊外の住宅地、保養地、漁村、農村、市民意識の高い都市、といった様々な要素をもつ地域社会と、共存共栄を目指す漁港の在り方を模索している。

 

(4) 千葉県九十九里町片貝漁港:漁港拡大に伴うサーフスポットの形成

長い砂浜に建造された漁港。漁船の大型化と沿岸漂砂との戦いのために規模が拡大された結果、周辺の海岸地形が変化した。その結果、サーフスポットが形成され、近隣はサーファーで賑わうこととなった。マリンスポーツによる地域振興が注目されているが、サーフスポットの形成は漁港建設の副産物か?

 

2. 自然調和型漁港の構造

エコロジー土木の一分野として、「自然調和型漁港」がある。技術的にも発展段階にあるものだが、それをめぐる学問の構造は図1(添付)の通りである。これより、構造物そのものなら力学を中心とした従来型の工学で十分かもしれないが、社会的文脈に置かれた漁港にまつわる問題を解決するのであれば、超領域的でないと対応できないことがわかる。この全てを満たさねばならないというわけではなく、個々の例についてプロジェクトが作れれば対応できるのではないかと思われる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION