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海洋資源ストックはやはり何らかの公的機関によって管理しなければならない。そしてそれは海洋というものの性格上、国際的ないし全人類的なものでなければならない。しかし現在ではまだそのようなことを成し得る国際機関は存在しない。国際連合などはこのような課題を担うことのできる組織ではない。

海洋資源の公共的管理といっても、私企業の活動を全く排除することを意味するものではない。資源の利用についてはむしろ私企業の活動と市場の機能に委ねるべきであろう。しかしストックの維持管理は公共機関によって行わなければならないということなのである。このような国際的公共機関をどのように作るべきか、またその運営のルールをどのようにするかは、海洋に関する重要な社会科学的課題である。

海洋資源の中には非再生資源non-renewable resourcesもある。その中には海水中のNaClのように事実上無限に存在するものもある。これについては海洋の側か問題にすべき所はない。海水からNaClを取りすぎたために海水の塩分濃度が低下してしまい、そのために問題が起こるなどということは当分考えられない。その他の海水中の無機的成分についても、それが利用可能な程度の濃度でふくまれているとすれば、その量的限界は問題とならないはずである。

これに対して海底の鉱物資源、特に石油資源はすでに北海油田を始めとして、経済的に重要な意味を持ちつつある。その資源量は有限であり、かつ特定の場所に限られるから、その場所によっては国際紛争の原因となる危険がある。海底資源の開発に関する国際ルールはもっと明確にしておかねばならない。

海洋はまた朝汐、海流、或いは海水の温度差などにエネルギー資源をふくんでいると考えられる。また海上の風力や海面に注ぐ太陽光もエネルギー資源と見ることができる。その利用については、まだ解決すべき技術的問題が多いが、潜在的にはその面積に対応する大きなエネルギー源であると考えられる。

 

4. 環境としての海洋

海洋が陸地の自然環境、特に気候や気象に大きな影響を与えることはよく知られている。最近注目されるようになったのは、海流の変化が気候や長期気象に大きな影響を及ぼすということである。ペルー沖に発生するエルニーニョの発達の程度や方向が、東アジア、東南アジア、オセアニア、ラテンアメリカの広範な地域の気候に大きな影響を及ぼすことが最近注目された。気候や長期気象の変化は農業を始めとする産業や、社会生活に大きな影響を与えることはいうまでもない。

 

 

 

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