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海洋は人類社会にとって、資源、環境の両面で最大の自然資産である。しかしその資産としての性質については、まだ解明されていないことが多く、今後研究すべき課題は多い。

海洋にある資源としては、生物資源と海洋資源がある。前者には動物資源と植物資源海洋にある資源としては、生物資源と非生物資源がある。前者には動物資源と植物資源、後者には海水中の資源と海底資源、更に物理的エネルギー資源がある。

動物資源、とくに魚類は人類が古くから利用してきたものであるが、しかしその利用のしかたは、最近までは基本的に採取、狩猟段階にとどまっていたといわねばならない。その中で漁獲技術だけが発達した結果、多くの魚類は乱獲の末、絶滅の危機に陥ることとなった。近年になって資源保護の観点から、漁獲に対する制限がいろいろな形で課せられるようになったが、しかしただ漁獲量を減らすというのは極めて消極的な対策に過ぎない。最近になって「再生可能な自然資源の最適利用」、すなわち資源量を維持しながら獲得できる最大の漁獲量に関する理論モデルも研究されるようになったが、それはまだ極めて単純なものにとどまっている。現実に有効な結果を得るためには、多くの種類の生物の間の生態系のバランスと、海洋の資源条件のトレンド的なあるいは不規則な変動の影響をも考慮に入れねばならない。それは恐らく高度に非線形なカオス的システムとなると思われるので、その「最適管理」の問題は、まだ理論的にも未解明な問題が多い極めて興味のある分野のように思われる。

陸上での牧畜に当たる養殖漁業については、一定の水域で育成するものと、稚魚を放流するという形式のものとがあるが、いずれも陸上での牧畜に比べれば技術的に未発達の段階にある。陸上でのケージ飼育にも当たる狭い水域での飼育については、しばしば小型の魚を餌として大型の魚を育てるという形をとり、餌となる魚自体は外洋で漁獲される場合も多いので、有効に利用される蛋白質の量という観点からすれば、その効率は高くない。また稚魚の放流は、稚魚から成魚への過程が管理されていないので、その収穫率は低い。将来の可能性としては開けた海洋における放牧のような形での魚群の育成ということが考えられるであろう。

海洋の植物資源は、これまでごく一部の海藻などが利用されていたに過ぎなかった。しかし食糧として、あるいは動物や魚の餌として、そしてまた他の目的のために、海洋の植物資源の利用の可能性はまだ大きいと思う。あるいはそのために有効な植物を海中で育成すること、つまり海中農業も考えられる。原理的にいえば、陸上の3倍近い面積をしめる海洋に注ぐ太陽エネルギーを光合成のために利用できれば、そこから極めて大きな生産力を得ることができるはずである。

 

 

 

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